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第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-3」 2041年10月27日 A飛行場の片隅で天使型のエーベルたちが自分の武装パーツの整備を行なっている。 連日の戦闘で被弾した箇所や老朽化したパーツなどを交換したり修理するなどやることは多い。 エーベルが鼻歌を歌いながら自分の武装パーツを弄る。 エーベル「フンフンフウーーン♪」 シャル「ごきげんだな、どんな具合だ?」 エーベル「エンジンの油漏れがひどくてね、オイルクーラーの方はどうにかなったが、パッキンがなくて苦労しました」 シャル「で、どうしたんだ?」 エーベル「この間撃墜したテンペスタの廃材からかっぱらったんですよ」 リイン「シャルッ!!!」 リインが血相を変えてシャルに詰め寄る。 シャル「私たちのドラッケン戦闘爆撃隊は地上攻撃に専念させるようにマスターに言ったそうですね!!」 シャル「だったらどうした?」 リインが怒鳴る。 リイン「シャルはテンペスタとやるのが怖いんですか!!」 シャル「テンペスタと空戦してもムダだからな」 リイン「戦乙女のアイネスの連中に任せておいていいんですか!!俺の仲間はみんなテンペスタに叩き落されちまった!シャルの仲間もそうでしょう!!なぜですか!?あんたはソレで悔しくないんですか!?」 シャルががっとリインの胸倉を掴む シャル「リイン!!てめえェそれ以上知ったような口を叩いてみろ!!もう二度とキサマとは飛べないようにしてやるぞ!」 リイン「グッ!」 シャルはぱっとリインの胸倉を離すと去っていく。 リイン「へっ・・・チキン野郎め!」 横で聞いていたエーベルが舌打ちをする。 エーベル「おい、リイン!!」 リイン「なんだよ・・・」 エーベル「つまらんことを言うな、ちょっとやりやったぐらいのエース気取りで一人前の口をきくんじゃない」 リイン「俺はそんなつもりじゃ・・・」 エーベルはため息をつく。 エーベル「シャルだって何度もズタボロになりつつも帰ってきている」 リイン「何度も負け戦で臆病風に吹かれたって感じか?」 エーベル「・・・いいか、よく聞けよ小娘、テンペスタと戦うことだけがここの集団バトルロンドの戦闘じゃねえ、地上攻撃や支援攻撃も立派な戦闘だ」 リイン「・・・・」 エーベル「重装甲、重武装の戦闘爆撃機型のドラッケンで軽量高機動のテンペスタに空戦で勝つのは難しい。テンペスタを落としたいお前のガッツは分かるだがな、シャルは爆装した重いドラッケンでテンペスタのウヨウヨ待ち構えている所に味方の支援用の低空攻撃をかけてきているんだ、そしてそれをさらに続けようと言うんだ。上空を他の神姫に、俺やアイネスの連中を信じて任せてな」 リイン「そ、それは・・・」 エーベル「シャルがチキン野郎かどうか、よく考えろよ、その足りない頭でな・・・」 エーベルはそういうと再び自分の武装の整備を無言でもくもくと続ける。 2041年10月28日 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 小川にB飛行場に補給を行なう旧式の輸送艦型MMSが数隻、小川を下る。 チーム名「マテハン」 □コルベット艦型MMS「アルバトロス」 Sクラス オーナー名「小野 幸助」♂ 31歳 職業 システムエンジニア □輸送艦型MMS「モントレ」 Cクラス □輸送艦型MMS「フェイサー」Cクラス □輸送艦型MMS「ラヴァトリ」Cクラス □砲台型MMS 「ブレア」Bクラス □砲台型MMS 「ザフィー」Bクラス □火器型MMS 「ノレマ」Bクラス オーナー名「橘田 勝」♂ 40歳 職業 印刷会社総務 シャル「敵チームの輸送船団だ!撃沈するぞ!」 ライラ「生意気にコルベット艦型なんて護衛に引き連れてやがる!」 チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」 □戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス □戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員 □戦闘爆撃機型MMS「リイン」 Aクラス オーナー名「伊上 直人」♂ 26歳 職業 総合卸商社営業員 シャルたちのドラッケン戦闘爆撃隊がロケット弾を積んで上空から急降下で攻撃を仕掛ける。 アルバトロス「レーダーに感有り、敵機確認!機種はドラッケン戦闘爆撃機4機を認識」 小野「対空戦闘方位3-2-0距離30に備え、このままの戦闘隊形を崩すな、後続の輸送艦隊に発光信号、対空戦闘用意!」 アルバトロスがチカチカと発光信号を発する。 輸送艦型神姫の甲板に上がっている砲台型神姫たちが砲台モードに展開し、迎撃の準備を始める。 橘田「対空戦闘用意っーー各砲台各個射撃はじめ!敵を近寄らせるな!」 ドドドドドドドン!!ズンズズウズン!! 輸送艦型神姫の甲板から砲台型神姫による激しい対空攻撃が行なわれる。 ライラ「おはッ、輸送艦風情がなかなかやるな!」 リイン「シャル!リインだ、殿をやらせてください!」 シャル「・・・」 シャルはリインの顔をじっと見る。 シャル「殿は砲火が集中するぞ!気をつけろ!」 リイン「わかっています!」 シャルはぐんと機首を下げると水面スレスレを飛ぶ、それに続くリイン。 アルバトロス「ドラッケン4機!輸送船団を狙っています!」 小野「いかん!アルバトロス、全速前進!なんとしても守れ」 コルベット艦型MMSがシャルたちの前に躍り出る。 アルバトロス「やらせるかァ!!」 アルバトロスは主砲の2mm単装砲をシャルたちに向かって撃ちまくる。 ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!! ガキンバキンゴキン!!シャルの装甲板に命中し穴だらけになるが、シャルはひるまない。 シャル「こなくそ!これでも喰らえ!!」 シャルはグレネードキャノンを展開すると、アルバトロス目掛けて連続で撃ち込む。 ドゴオオオンドッゴオオンンッ!! アルバトロス「うぐおおおおお!!?」 アルバトロスの砲塔に命中し爆発が起きる。 ズンズンズウズズウウウウウン!! シャル「リイン!!ついて来ているか!?」 リイン「はい!!」 シャル「俺はさっきのコルベットの攻撃で満足に動けない!輸送船団をライラたちと一緒に血祭りにあげろ!」 リイン「了解!」 アルバトロス「ごほごほ、主砲塔のモーターが潰れました砲撃不能・・・消火装置作動、火災鎮火、SAM発射します」 アルバトロスは垂直ミサイルを連続で発射する。 ライラ「警告!ミサイルミサイル!」 ミサイルが山なりの弾道を描いてリインたちに襲いかかる。 リインはすかさずチャフフレアを放出する。 リイン「FUCK!」 バッババッバババン!! チャフフレアの欺瞞によってミサイルはあらぬ方向に命中する。 ズンズウウウン アルバトロス「ミサイル全弾はずれ!小口径砲による射撃を行ないます」 アルバトロスは格納式の機関銃座を展開し、リインたちに集中砲火を浴びせる。 ドドドドドドドド!! ライラ「てめえはしつこいんだよ!!」 ライラが機関砲をアルバトロスに向けて撃ちまくる。 ドガドガドガドガ!! アルバトロス「うわあああ!!ま、マスタァーーー!!」 体中を大口径の機関砲で撃ち抜かれ、弾薬庫に引火したアルバトロスは派手な水蒸気爆発を起こして轟沈する。 □コルベット艦型MMS「アルバトロス」 Sクラス 撃破 モントレ「ご、護衛のコルベットが!」 ライラ「邪魔なコルベットは沈めたぜ!」 リイン「よし!今だ!!ロケットランチャー全弾撃ちつくせ!」 バシュバシュバシュシュシュ!! ブレア「うわああ!」 ザフィー「に、逃げろ!」 ノレマ「NOOOO!」 橘田「か、回避全速!!」 モントレ「ま、間に合いませ・・・」 フェイサー「うわあああああああ!!」 ズドドドドオオンッ!!! 物凄い爆音と水柱を立てて、一気に3隻の輸送艦型神姫が木っ端微塵になってバラバラに吹き飛ばされ轟沈する。 □輸送艦型MMS「モントレ」 Cクラス 撃破 □輸送艦型MMS「フェイサー」Cクラス 撃破 □輸送艦型MMS「ラヴァトリ」Cクラス 撃破 □砲台型MMS 「ブレア」Bクラス 撃破 □砲台型MMS 「ザフィー」Bクラス 撃破 □火器型MMS 「ノレマ」Bクラス 撃破 ライラ「イーーーヤッハ!!」 セシル「まるでイワシ缶だぜェ」 リイン「やりましたね!シャル」 シャル「今日は久々に大量だな」 シャルたちは、勝ち誇ったように上空を旋回し、エンジン音を轟かせる。 リインがシャルのすぐそばを通る。 リイン「シャル、昨日はその・・・すまなかった・・・臆病者なんていってしまって」 シャル「本当に臆病ならリアルバトルの武装神姫なんかやらねーよ、ケガしないバーチャルのロンドやってるぜ」 リイン「それもそうだな・・・」 ライラ「そーいえば今日はいつものテンペスタの連中いねえな」 セシル「あいつらはマスターが女子高校生だからな、今週はテストの前だから大人しいんだよ」 ライラ「なるほど」 セシル「ということは、テストが終わった日が危険ということか・・・」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-4」 前に戻る>「ドラゴン-2」 トップページに戻る
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[部分編集] カービン もともとは馬上で使用する軽量なライフルの事。現在では室内等で使いやすい短くされたライフルをこう呼ぶ。ただし明確な定義はない。ライトガンカテゴリーのイーダ型の武装。ライフルとハンドガンがあるので選ぶ時は注意。 ガイア ヴァルハラのトップに君臨している(いた?)神姫マスター。専用シルエットのオーラ(?)により独特の雰囲気をかもし出している。その厨二病溢れる言動から色々とネタにされ、「大地さん」と親しまれて(?)いる。かっこいい専用戦闘BGMがあるが、イベント戦でしか聞けない。相方はストラーフMk.2のハーデス。説明では他人の大事なものを壊すことが好きなS(意訳)とあるが、むしろただの戦闘狂という方が近い。とりあえずチューブステージでCHIKARAはやめて下さい。 楽器 打撃武器の一種なのだが、このゲームのルールにおいて弱い要素が揃っているためどうにも使うのが難しい。ちなみに打撃に使用する割に何故か打楽器はない。もちろん楽器は本来武器ではないが、ゲーム等では武器として登場することがたまにある。なお、DLCで登場する武器パラボナソナー"マポノス"は楽器カテゴリの武器では楽器の形状はしておらず、純粋な兵器の形状である。補足:ベイビーラズは公式に打楽器を持っているが、ドラムセット本体はリアパーツ、スティックはダブルナイフ扱いであり、パーカッションは通常頭に付けているためか武装ですらない。 勝ち組 何かの要素で勝っているとされる者達の事。男性ならば身長・財力・ルックスなどだったりするが、女の子ばかりな神姫においては一部パーツの大きさで決まると言われる。バトマスでは一般的にイー姉、レーネ、アーク、紗羅檀、オールベルンあたりが勝ち組と呼ばれる。一方で負け組とされる神姫については記述を避けるが、おおむね指摘するとムキになるのが負け組だとい(ここから先は何かで汚れていて読めない)勝ち組側は大抵その事に自覚が無く、「大きくてもそんなにいいことないんだけどなぁ」といった発言が飛び出すことが多い。…ある奴と無い奴の溝は何よりも深く昏いのである。ちなみに、神姫の場合胸パーツは換装できるが、やっぱりそういったパーツは需要があるのか和津香のような悲劇を産むことになったりも…。 滑腔砲 戦車などの大砲で砲身内に砲弾を回転させる旋条がないもの。より高速で砲弾を発射したり、回転すると効果が落ちるタイプの砲弾を発射するのに使う。神姫では、フォートブラッグのリア装備、FB1.2mm滑腔砲がこれにあたる。神姫の装備では、なぜかバズーカ扱いである。対して、砲身内に施条を切って砲弾を回転させる砲をライフル砲(施条=ライフリング)と呼び、こちらは回転することで砲弾の飛行が安定するので、より命中率を求めるタイプの砲弾用の砲となる。 ガトリング ガトリング砲。100年以上前に発明された機関銃。多銃身がリング状に配置されていることが特徴で、複数の銃身を回転させる事で装填、発射、排莢のサイクルを自動で繰り返しつつ連続射撃を行うことを可能とした。手持ち式ガトリングは単銃身で連続射撃が可能かつ軽量の機関銃の登場で一気に廃れたが、同じ数の弾丸を発射した場合銃身が複数ある分だけ銃身へのストレスが減るため発射サイクルを上げても銃身寿命が長い、万一不発弾などの不具合が生じても滞りなく次弾を発射できる等の利点があり、現在では重量が大きいことより動作不良が問題になる航空機搭載機関砲や艦船のCIWSに採用されている。なお、初期は手動式だったが、現在は電動等が用いられる。ちょっと使いにくい武装だがRA「T・ARMS」を入手するとつい使っちゃうんだ。 ガブ/ガブ子 ガブリーヌの俗称の一つ。 ガブリーヌ パンドア製神姫、ヘルハウンド型ガブリーヌ。前作DL神姫でシナリオは第7号にて実装される。自分は地獄から来た、と主張するが、同期の蓮華には「地獄の駄犬」呼ばわりされていた。グラ姐未登場の本作においては、唯一の褐色肌神姫である。 金朋地獄 蓮華の中の人、金田朋子嬢の言動が、あまりにハチャメチャで聞いた者の腹筋を破壊する上に抜け出せなくなる中毒性を持つところから付けられたもの。既に固有魔法の域に達しているとも。バトマスのプレイ動画でも、蓮華が取り上げられると、もれなく金朋地獄のタグが付けられている。今から蓮華のシナリオが実装される日が心配楽しみである。←DLC第5号にて実装。予想通りの金朋地獄が堪能できましたw余談だが、本人のブログ名が「カネトモ地獄 早起きは三文の毒」であり、ある意味公認の言葉である。 キシマさん プロキシマの俗称の一つ。 キメラ キメラ装備とも。複数の動物の混ざった姿をした神話の合成獣キメラを語源とし、転じて神姫各々の純正装備以外の武装を一つでも装備した状態を指す。見た目の整合性やキャラクター性より、よりストレスなく嫁神姫を操作できることを重視したアセンブルスタイル。しかし実際アビリティの補完、戦闘スタイルの自由度確保のため、アクセサリーと武器については何がしか純正以外のものを装備しているプレイヤーがほとんどで、暗黙のうちにアクセサリーと武器に限っては何を装備していてもキメラではないと見なされている。また、固有RAを使用できる純正武装だけでコストを使い切ることはまずないので、空いている部位に追加の武装を施す「純正+α」のアセンブルもごく普通に行われる事である。対戦の際にはこのあたりについてどうするか確認しよう。ぶっちゃけ完全純正以外のアセンブルがアリかナシかで全く別のゲームになる。古くは神姫のゲームがバトロンのみだった時代からある単語で、性能重視で外見がすごいこと(全身ハリネズミのようにブースターがついているなど)になっている神姫が主にこう呼ばれた。キメラの名はそのような外見も関係していたのかもしれない。バトロンでは最終的に武装がまったく同じで素体だけ違う神姫ばかりという状態になったこともあり、「(性能的)個性がなくなる」という事実から「キメラ」を否定的に考えている層も少なくない。しかし武装神姫はもともと公式に組み替え遊びを是としている玩具であり、組み替えの自由がある。結局は「他所は他所、ウチはウチ」の精神が大切ということだろう。また、先の経緯からキメラという呼び方を蔑称として使う人、受け取る人も少なからず居るので空気を読む事も忘れずに。 キャッキャウフフ 一般的には「じゃれあう様子」をさし、神姫とイチャコラする意味で使われる。「キャッキャウフフ」と半角で記載することが通例である。 旧黒子 初代ストラーフの俗称の一つ。ストラーフMk.2と区別するための呼び名。 旧白子 初代アーンヴァルの俗称の一つ。アーンヴァルMk.2と区別するための呼び名。 牛丼/ぎゅうどん/ギュウドン/ギュウドン 戦乙女型アルトレーネの事。バトルロンドやバトルマスターズにおいても、ぎゅうどん会話ネタがついてきたため。 キュクノス ドレス・メカニカ製神姫、白鳥型キュクノス。鴉型アラストールと同じく、コナミが2011年にイベントと通販のみで発売した神姫で、武装部分はレジンキャストになっており、素体はMMS NAKEDを用いる。彼女の登場のために、ガレージキット版で白鳥・黒鳥と呼ばれていたオールベルンが剣士型にされたと勘違いされ、一部のファンからあらぬ恨みを買う羽目になっていたりする。(実際にはオールベルンが「剣士型」として製品化が発表されたワンダーフェスティバル後の飲み会で製作が決まったため、無関係と思われる。また、オールベルンガーネット・ジールベルンサファイアもほぼ同時に発表されており、そちらの影響とも考えられる)アラストールと同様に、武装セットのみがDLC第7号にて実装される。オールベルンにキュクノスのリアを組み合わせ、「白鳥型オールベルン」を再現した紳士も多いのではないだろうか?戦力面でも、オールベルンの純正装備にキュクノスのリアを組み合わせると空中移動系のアビリティが全て揃う(急上昇・急降下、空中ダッシュが追加)ので、悪い組み合わせではない。 強化ミミック ストーリー終盤とクリア後のMAPにてエンカウントするミミックの強化型。SPDとDEFの初期値がずば抜けており、他の部分の数値も素体中で高い部類である・・・が、このゲームではSPDの値が反映される上限がある。また出現の条件を考えると自神姫も十分に強くなっている為、あまりミミックと大差なく感じるかもしれない。ただし、ジャスティスやミミックを育てているときには、Love1だろうと、外に出ると強化ミミックが襲ってくるので、そこだけは注意されたし。 グラフィオス マジックマーケット製神姫、サソリ型グラフィオス。素体未登場だが武器(レサートロッドシステム等)だけ登場。AIは非常に好戦的な性格付けがなされており、「悪の組織の女幹部」や「魔王」などと称される性格の持ち主。ことバトルに関してはマスターに対しても高圧的にふるまうことも。イーアネイラ並の豊満ボディに、胸部装甲とサイハイソックス以外は紋様を描いただけの実質裸という抜群の露出度を誇り、美少女型が大多数を占める神姫達の中で他にイーアネイラ型、プロキシマ型くらいしか居ない美女型。加えて他にはガブリーヌ型しかいない褐色肌であるなど希少性要素のオンパレード。選択肢を広げる意味でも、バトマスにも登場して欲しかった。武装の殆どがリアに集中しているのが特徴。また武装を組み合わせてサソリ型ビーグルメカ「ウィリデ」に変形させることも可能。更に複数の神姫の武装を合体させるシステムに対応し、同時期に開発されたウェスペリオーと互いの武装を合体させることで、大型ドラゴン型メカ「ゼオ」を作り出せる。そのためフィギュアのプレイバリューは非常に高い。このロマン溢れる複数の神姫の武装を合体させるシステムを持つ神姫は、グラフィオス ウェスペリオーの「ゼオ」の他に寅型ティグリース 丑型ウィトゥルースの「真鬼王」 「ファストオーガ」とカブト型ランサメント クワガタ型エスパディアの「ヘラクレス」がいるが、残念ながらバトマスには一切登場しない。 クラブヴァルハラ メインストーリー中盤以降に登場する非公式バトルを行っている賭博場。名の由来は北欧神話において決戦のときに備え戦士達の魂を集める宮殿ヴァルハラ。勝てば相手の武装を手に入れ、負ければ武装を剥奪される。ここにしか出てこないマスターもいる。登場時点では非合法な場所のはずなのだが、ゲームセンターで見かける面々がホイホイ出入りしていたり、違法改造が横行している割に敵の戦闘能力に差異はないなどあまり緊張感はない。浄化後はそれに拍車がかかる。tipsにもあるが問題なのは現金による賭博と神姫の違法改造であり、ここでの神姫バトル自体は違法ではないため安心してほしい。一部マスターが、賭け金がどうのこうのと呟いていることがあるが、聞かなかったことにするのが大人の対応である。柴田君の武器がピコピコハンマーだけになっている。もうやめて、柴田君の使える武器はゼロよ! グループケーツー 武装神姫世界における神姫製造メーカーのひとつ。フブキのメーカー。長らくシンボルマークが不明だったが、フブキ弐型 ミズキ弐型のマーキングに、縦に並んだKKを図案化したものがあり、これがグループケーツーのシンボルマークと思われる。 クレイドル 神姫の充電に使われる充電器。主人公の部屋にはクレイドルが1個しか確認されていないため、34体以上の神姫をどうやって充電しているのやら…。主に人間でいう寝床のような形で利用するものらしい…が、アークのイベントではどう聞いても押し込んでいる。なお、同イベントの話を聞くと、どうやら一つのクレイドルを使い回している様子だが、さて…。コナミスタイルで通販グッズとして販売もされたりするが、こちらは無論神姫の充電機能は付いていない。代わりと言ってはなんだが、USBに差すとランプ部分が光る。…ただ、それだけである。 黒子 悪魔型ストラーフの俗称の一つ。今作ではストラーフMk.2も含む。 黒にー 悪魔型ストラーフMk.2の俗称の一つ。黒=ストラーフ にー=Mk.2(に)。間違っても黒いニーソックスの略ではないぞ。大体誇り高いストラーフがそんな装備など…、あー、ど、どうしてもというのなら、その…ゴニョゴニョ 黒星紅白 アフォンソファクトリー製のエストリルとジルリバーズの素体部分を手掛けたデザイナー。代表作はキノの旅やサモンナイトなど。エストリル・ジルリバーズ発表時に降臨した本人のコメントによるとペロリストらしい。 軽白子 天使コマンド型ウェルクストラの俗称の一つ。「軽」なのはライトアーマーシリーズのため。ちなみにヴァローナはこの法則からだと「軽黒子」だが、モチーフからか夢魔子と呼ばれることの方が多い。 ゲイルスケイグル(EX) アルトレーネ専用レールアクション。前作では当てにくいレールアクションの代名詞だったが、今作では威力共に大幅な改善をみられた。が、槍の向きが逆なのはアルトレーネ型のいつもの事だったりする。バトロンではちゃんとした向きで投げるのにどうしてこうなった。ちなみに名前は北欧神話に登場するワルキューレの一人の名前からで、「槍の戦」の意味。 ゲームセンター 娯楽施設。他の神姫オーナーたちと神姫バトルを行う場所。子供からお年寄りまでが利用しているが、神姫上級者も多く訪れるようで、普通の人はちょっと入りずらい雰囲気を醸し出しているような気がしないでもない。。ツガルによると主人公が的確に変人を選んで戦っているだけらしいが…あるいは単に主人公の周囲に濃い人が集まりやすいだけなのかもしれない。隣町にもゲーセンがあり、筐体からレイアウトまでまったく同じようだ。全国展開なのだろうか。ちなみに、画面を見るかぎりレースゲームらしきものが見え、他にも紗羅檀のシナリオでリズムゲーム(「神姫が乗って足で遊べる」ということから、恐らくbeatmaniaIIDXだと思われる)が置いてある事が分かっている。 ケモテック 武装神姫世界における神姫製造メーカーのひとつで、ハウリン・マオチャオなどのメーカー。名前通り主に動物を題材にした神姫を取り扱っており、会社のシンボルマークも動物の顔を図案化したもの、と徹底している。神姫デザイナーBLADEのデザイン神姫はほぼここ。 誤爆は神姫名うp スレで誤爆してしまったときは、自分の神姫達につけた名前をうpしなければならないというバトルマスターズ神姫スレの鉄の掟。元々はおもちゃ板の武装神姫スレの鉄の掟「誤爆は神姫(の写真)うp」から。 コナ☆スタ コナミの通販サイト「コナミスタイル」の事。表記の「☆」は略称の語感が某アニメに似るため。武装神姫の限定商品などを取り扱っていたりする。特に地方在住の武装紳士にとって、一般流通しないリペイント版神姫を入手するほぼ唯一の手段でもある。クリアファイル等の「コナスタ限定の」オマケがついてくることも多い。価格は基本的に定価販売(ごくたまにセールをするが、ほぼ瞬殺される)。値段は気にしないが確実に欲しいという場合、ここで予約するのも手だろう。 固有RA 各神姫に特定の武装を施した状態でのみ使用可能になる専用RA、および特定ライバルが使用してくる特殊RAのこと。神姫専用RAにはランク3~5武装を使う通常版(1体のみ例外)と、ランク6~7武装を使うEX版がある。基本的に数を撃ってこその射撃系RAはスキあらば発射できる通常版のほうが使い勝手が良いが武装が貧弱になるという問題があり、EX版はライドマックス状態でしか使えないため出したいときほど使えない。武装も含めて性能はピンキリ。だがやはり、トドメはこれで締めたい。 コンマイ コナミの蔑称あるいは愛称。“KONAMI”をローマ字入力する際、"KONMAI”と打ってしまうことが少なくないことから。またあるアーケードゲームでコナミ自らが誤植してしまったこともある。
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前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前にしてみれば、小さな私の躯にはかなり大きい。更に 躯の小さな神姫達ともなれば、天を突く程の巨大な風車なのかもしれん。 「……ふむ、どうだ。これに乗って、今から暫く皆に話をしたいのだが」 「う、うん。良いわよ……アタシには何がどうとか、まだ分からないし」 「きっと東京の夜景が、煌めく無数の宝石みたいに映るはずですの~♪」 「楽しみ、かな。さぁ、マイスター……行こう?邪魔のされない領域に」 「どんな時間が過ごせるのか、楽しみですね……ええと、大人一枚です」 訝しむ受付嬢に“大人一枚”と復唱して、私達はゴンドラへと乗り込む。 デートスポットに一人で来る、こんな外見の私を不審に思うのも当然か。 だが無闇にそれを怒るよりも、今は大切な“妹”達との時間を尊重する! 「ほう……これが、東京の夜景か。どうだ皆、自分達が住まう街の灯は」 「うん、綺麗!凄く綺麗よ……世界がこんなに輝いてるのに、アタシっ」 「それ以上は言いっこ無し。エルナちゃんも、この光景を楽しむんだよ」 「そうですよ。ほらアレ見て下さい!東京タワーですよ、東京タワー!」 「夜空の星はちょっと見辛くても、夜の灯火はまた綺麗ですの~……♪」 その自制が奏功し、皆は輝く夜の街並みに釘付けとなっている。無論私も 東京の美しさを再認識して、荒み気味の“心”が満たされるのを感じる。 陳腐とは思うが、こういう些細な事さえも……今なら大事に思えたのだ。 そして最上部へ差し掛かった辺りで、私は話を切り出してみる事とした。 「……さてと、まずは今日の修理で何をしたか。それを告げねばならん」 「修理、ですか?あたし達は全身のモーターと、電装機器が不調で……」 「とても立ってられなくて、セーフティが起動したんだよ。大丈夫かな」 「有無。それらの交換・修理は無論だが、CSCへの負荷が大きかった」 正直、今告げて良いかは悩んでいた。だが、この後にもっと重大な告白を せねばならん以上は、この程度なら『大事の前の小事』と言えるだろう。 私は、少し不安げに見つめる四人を膝に乗せて“治療”の内容を告げる。 「そこで損耗が軽微な“プロト・クリスタル”の情報を利用したそうだ」 「利用?それって、データの補強に別のCSCを用いたって事ですの?」 「そうだ。現行型CSCの論理ダメージは、そうして修復したらしいぞ」 そして物理的な傷は、Dr.CTaが持つマイクロマシン用の技術で回復した。 その辺をどうやって直したのかは、私には分からぬが……恐らく彼女なら 後顧の憂いがない程度に“傷”を修復してくれた、そう私は信じている。 「そしてエルナ。お前の“CSC”も、同様の方法で修復したと聞いた」 「えッ!?ちょっと、CSCって……アタシにそんなのが入ってたの?」 「有無。当然、現行型CSCではない。もう一つの“プロトタイプ”だ」 「じゃあ……これでエルナちゃんは、正真正銘“神姫”になれたのかな」 「更に言えば、本当の意味であたし達の“妹”にもなりましたね……♪」 それはロッテのCSCが正式に認可される程度に、CSCと酷似した珠。 神姫の試作品が源流ならば、それも必然だったのだろうが……エルナに、 “心”が宿るのを拒む者が居なかったのは、これで確かとなったのだッ! 「やっぱりエルナちゃんは、愛されてましたの。そしてこれからもっ♪」 「う、うん……アタシにも“心”……“真心”が、宿ったのかしら?」 「無論だろう。四人とも、各々の“真心”を得て蘇ったのだ。大丈夫!」 恐らく同じ修理法は何度も使えぬだろう。それだけの“離れ業”なのだ。 だが、Dr.CTaがそうして皆を蘇らせた事は……私達にとって特別な意味を 持つだろう。“魂”が神姫にあるならば、その繋がりがより強固な物へと 進化したという事が、言えるのだからな。私にとっても、誇らしい事だ! 「そっか……じゃあ、アタシもお姉ちゃん達の大切な“妹”になれる?」 「勿論ですの!エルナちゃんは、これからもずっと大切な存在ですの♪」 「ボクらも……アルマお姉ちゃんも、ロッテお姉ちゃんも……なのかな」 「それは、マイスターの“告白”を聞けば分かると思いますよ……うん」 「そうだな。では今こそ、言おうではないか……っと!?ちょっと待て」 そして“様態”の説明が一区切り付いた所で、皆の視線は私へと集まる。 そう、いよいよ告げねばならぬ時が来た……と思ったのだが、見ると外の 風景は、輝く夜景から元居たビルの谷間へと戻ってきていた。そう、今は 観覧車の中……一周してしまえば、降りなければならない。迂闊だった。 「う、うぅむ……時間が来てしまった。場所を変えて、そこで話そうか」 「それがいいですの。ちょっといい雰囲気だったのに、残念ですの……」 「ぅぅ……じゃあ何処に往きますか?あたしは何処でも大丈夫ですけど」 「やっぱり、ロマンチックな場所がいいと思うんだよ。大事な事だから」 「アタシは……胸が熱くなる感じがしてたから、助かるわ。少し怖い位」 ──────私も怖いけど、だけど……とても胸が暖かいよ。 第五節:約束 場所の選定ミスによって、告げるタイミングを逃した私達。だが、ここで 諦めるつもりはない。という訳で、観覧車を後にした私達は海浜公園へと やってきた。潮騒の音が、優しく夜闇を揺らす……そんな静かな場所だ。 だが、どうも仕切直しとなった空気は重苦しい。何から話せばいい……? 「……ところでさ、マイスター。なんでアタシの名は“エルナ”なの?」 「む。いきなりだな、エルナや……そうか、名前の由来が知りたいのか」 「そうみたいなんだよ。ボクは、お店の名前からもらったんだけど……」 「あたしもですね。“ALChemist”から一文字もらってます……あっ!」 そんな雰囲気を撃ち払ったのは、エルナだった。そう、“妹”の名前には しっかりと意味がある。店名から、ドイツ人女性の名を導き出したのだ。 “Alma”と“Lotte”、そして“Clara”に“Erna”。不思議か?だがッ! 「そう。エルナの“r”と“n”は、“m”を分解して捻り出した物だ」 「つまり“錬金術師”の名を冠する大切な神姫、って事になりますの♪」 「アタシも、同じ存在なのね……じゃあ残りの字は、どうするのかしら」 私の考えを聞いて、エルナは嬉しそうに……しかし、少しだけ不安そうに 私を見つめる。彼女の純粋な問いに対する答えは、私の胸にある。それは 少し照れくさい言葉となるが、“告白”の切っ掛けとしては上等だろう。 「まず、“ist”は“Christiane”……クリスティアーネから取った物」 「……なら残りの“h”はどうしますの?それが、気になりますの……」 「そうだな。“Herz”……ドイツ語で、“心”や心臓を意味する単語だ」 『え……?』 そうだ。皆の中心には“心”が……私の“心”がある。今から告げるのは それを確固たる物とする為の、誓いの儀式だ。言葉は、選ばねばならん。 「エルナ。新しく私達の“妹”となる、気高き紫の姫君よ」 「な、何?……マイスター、何でもいいわ。話して……」 「お前を解き放った以上は、終生まで側にいてもらうぞ?」 「これ……首飾り?お姉ちゃん達と、お揃いの……?」 私は、答えを待たずポケットから一つのペンダントを取り出して、彼女に 付けてやった。そう、私の……歩姉さんのペンダントを元に作り上げた、 五人お揃いのペンダント。これがエルナに与える、“約束の翼”である。 何れは此処に神姫バトルの階級章を嵌め込む。そうして完成する逸品だ! 「……クララや、静かなる翠の姫君よ」 「何、かな?マイスター……」 「智恵と、秘められた優しさ。これからも大事にしてほしい」 「……大事に?……それは……」 クララは答えを紡ぎ出そうと俯き何かを思うが、私は更に皆へと告げる。 四人もいるのだ、一々区切るよりは一遍に告げてしまった方が楽だろう? 「アルマよ。陽の如き、明るき紅の姫君」 「は、はいっ!?」 「お前の暖かさと“姉”としての矜持は、皆を支えていくだろうな」 「ぁ……支えるだけじゃ、ダメなんです……その……」 アルマは反論しようとしたが、そこで一端言葉を句切った。そのまま私は 残った一人へと、そして皆へと想いを告げる事とする。血が沸騰しそうな 感覚を堪えて、私は言葉を絞り出す。最早、隠す事は出来ないのだから。 「……そしてロッテ、澄み切った蒼の姫君よ」 「はいですの♪」 「お前は、純粋な“心”で私の……皆の力となった」 「……そう言ってもらえると、光栄ですのっ」 「そして、皆……今だけは、私の『本当の言葉』を伝えたい」 『はい……』 それは、遠い昔に棄ててきた私の“弱さ”。しかし、完全に捨て去る上で 彼女らに、それを伝えないといけなかった……ううん、伝えないとダメ。 私の弱い所も強い所も、全部……何もかも皆に見せないといけないから。 「コホン……皆、とても大切。『好き』とか『愛してる』だけじゃない」 「ま、マイスター……?」 「もっともっと純粋な『大切にしたい』って想いが、私にはあるんだよ」 「……マイスター、その口調……」 「でも、それを一言にしちゃうなら……やっぱりこうなっちゃうかな?」 「ずっと前、お店を立ち上げるより前の……弱かった頃の言葉ですの」 「だから、私は言うよ。アルマ、ロッテ。クララ、エルナ……四人とも」 「う、うん……何?」 そう……これは私が弱さを棄てる前に、歩お姉ちゃんと話していた言葉。 今この時は、この言葉で語りたい……だって、止められない想いだもの。 それはたった一言。陳腐でも、飾らなくてもいい。偽れない大切な言葉。 「“大好き”だよ……皆」 『あ……!?』 その言葉と共に、私は皆の小さな……とても小さな唇と、優しく触れる。 堅い殻の躯だけど、それでも“心”はとても甘く切なくて……暖かいの。 だけど、それを認識したから……私はやっぱり、素直になれないのだな。 「……は、はは。今更生き様は換えられぬが、雰囲気もあるしな?」 「マイスター……」 「だから今だけは、あの言葉で想いを……な、何だクララや?」 そう言い、照れながらも調子を戻した私の掌に乗るのは、クララだった。 彼女は、心なしか潤んだ様に映る“琥珀色の瞳”で、私を見つめている。 「異形を抱えて消えかかったボクを救ってくれたのは、貴女なんだよ」 「……う、うむ。そうだったな」 「その時から、ボクの“心”にはずっと貴女がいたもん」 「クララ……?」 「だから、ボクも言うよ……掛け替えのない大切な人に“大好き”って」 「んむ……ん、ぷは。クララ……むぐぅ!?」 そして私の唇に押しつけ返される、クララの小さな唇。そっと抱きしめる 私の手中で、彼女は身を退き……アルマへと、身を譲った。彼女もまた、 私の唇を奪い……そして、泣きそうな儚い笑顔を浮かべつつ言ったのだ。 「ん、ん……あ、アルマっ?」 「支えるだけじゃダメです。あたしも、皆を愛して……愛されたいから」 「アルマ、お前……」 「だって貴女の“心”が、あたしを暖かくしてくれたから……だから」 「……有り難うな、本当に」 「いいんです、一生お返しするんですから。“大好き”な人に……ね?」 涙が零れる。だが、皆の思いが籠もった“琥珀色の瞳”を見逃すまいと、 私はずっと皆を抱きしめながら、その想いに応えていくのだ。次に、私の 前に現れたのはエルナ。彼女は、頬を真っ赤に染めながら上目で告げた。 「……正直ね?まだ、何もかも信じ切れたわけじゃないの」 「エルナ……それは、そうだろうな」 「だけど、貴女達なら……お姉ちゃん達と貴女なら、信じてみたいわ」 「……そうか」 「“命”と“心”を掛けて救ってくれた皆を、“大好き”って言いたい」 「──────ッ!」 「それが、アタシの“真心”。素直じゃないけど、赦してね?……んっ」 「ん、む……んぅぅ!?」 エルナの告白と共に、私の唇は三度……そして四度塞がれる。最後に私へ “純潔”を捧げたのは……他ならぬロッテだった。彼女は、とても明るく 私に微笑みかけて、そして紅潮する顔をそっと抱きしめてきたのだ……。 「人と神姫では、歩いていける時間が違いますの。永遠は無理です」 「ロ、ッテ……?」 「だけど、全ての時間を“大好き”な人と共に使いたいですの♪」 「あ……ロッテ、皆……ッ!!」 「だって、本当に“大好き”なんですから……貴女の事が」 「……ぐす、みんなぁ……ッ」 「だから万一人間の恋人さんが出来たって、問題ないですの~♪」 「ッ……ばかぁ、っ!」 ロッテの“告白”を受けて、四人が私を見上げる。堪らなく、愛おしい。 私は優しく抱きしめた。小さな殻の躯に詰まっているのは“空”ではなく 純粋で穢れのない“心”。その眩しさで、また私の視界は潤んでしまう。 私は、ずっと……愛しい“妹”達を抱きしめて、歓喜の涙を流していた。 彼女らも、その想いは同じだろう……それがまた嬉しくて、微笑むのだ。 「ぐす……私の“弱さ”を見せたのはお前達だけだ、そして……だなっ」 「今後“弱さ”を見せる事は多分無いだろう……って言いたいのかな?」 「それでも大丈夫ですよ。今の……マイスターの“心”は、皆の中に!」 「ちゃんと刻まれたわ……大丈夫、忘れない。貴女の全てと共に歩むの」 「だから、もう一回だけ。皆で“告白”しますの♪いっせーのーせっ!」 『マイスター……“大好き”ですッ!!!!』 ──────私も、“大好き”だよ……。 ──武装神姫……小さな戦乙女。人と機械の垣根を越えて、そんな君達に 出会えた喜びは、ずっと朽ち果てない宝物だよ……小さな私の“妹”達。 皆で、ずっと一緒に歩んでいこうね。それが、皆の“願い”だから──。 妄想神姫:本編 / Fin. メインメニューへ戻る
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与太話7 : 週刊少年ジャンプのように 「マ、マママスターッ!! えらいこっちゃぁー!!」 特にすることもない退屈な日曜日。 たまには何もしないのもいいかとダラダラ漫画を読んでいたわけだが、あまりに唐突にエルが叫ぶものだから驚いた拍子に椅子ごとひっくり返ってしまった。 自画自賛したくなるほどの反応速度で後頭部へのダメージを回避した分、負荷はすべて腰に回った。これぞ今呼んでいた漫画の悪役が駆使する過負荷 『不慮の事故(エンカウンター)』 である。ダメージを押し付ける対象が他ならぬ自分であるあたり不完全ではあるが、そもそも過負荷というのは負完全なものなんだし、きっとそのへんの違いは瑣末なものだろう。 いやはや実に恐ろしい。こうもあっさりと漫画の世界の能力を再現してしまうとは、自分の才能が恐ろしい。実は俺も素敵な能力の持ち主であったらどうしよう。その素敵な能力で武装して、分不相応に武装して、箱庭学園なる学校の生徒会長にケンカを売りに行くべきだろうか。 いや、やっぱやめとこう。姫乃を残して二次元の世界に旅立つわけにはいかないし、何より腰が痛くて立ち上がれそうにない。 「いつまでひっくり返ってるんですかマスター! 一大事ですよ! 武装神姫界に永久に残る記念碑的なアレですよ!」 「……あ、ああ、うん。今ちょっと起き上がれないからエル、何があったか言ってくれ」 「えへへ~/// 知りたいですか? そんなに知りたいんですか?」 よく分からないが、エルの言う【記念碑的なアレ】は神姫がウザくなる成分を含んでいるらしい。そんなものに触っては駄目だぞ、と手を伸ばしかけると腰にズキリと突き刺さるような痛みが走った。 この調子だと頭を上げることもできそうになくて、机の上でエルがどんな顔をしているのかも分からない。 もしかしたらわざと俺をひっくり返して、痛みに耐える俺を見下ろしてニヤニヤしていたりするのだろうか。俺が過負荷(マイナス)になったせいでエルまで過負荷に堕ちてしまったとか。 ウザ迷惑な能力である。 「ではでは、発表します! なんと! なんとなんとなんと! 戦乙女型アルトレーネの再販が! 誰もが待ちに待ち焦がれ恋に恋焦がれたアルトレーネの再販が! 決☆定! したのでしたー!!」 パチパチパチ! と力強くも小さな拍手の音が聞こえてきた。 アルトレーネ再販か、良かったな、うん。 これであの神姫センター名物になりかけた戦乙女戦争は恒久的に防がれたってわけだ。世界の平和に万歳。みんな、折り鶴はゴミになるから作らないでおこうぜ。 「んん~? ノリが悪いですねマスター。ああ、もしかして今が嬉しすぎるあまり将来が愁しすぎるんですね! 私達ももう長い付き合いになりますから、マスターの考えていることはよ~く分かっていますとも。でも大丈夫です! 私さえいればマスターはずっと幸せです! 具体的に言うと姫乃さんとの付き合いでは決して得られない【おっぱい成分】は私が補填しますから!」 エルが言った直後、机を蹴ったような音がした。その音に不吉なものを感じたのも束の間、ひっくり返ったままの俺の腹の上にエルが飛び降りてきた。 身長15cm程度のからくり人形、武装神姫。 その身体が華奢で小さなものであっても。 飛び降りた場所が低い場所であっても。 腹から腰に伝達された衝撃は、十分なトドメとなった。 「ふごおおおおおっ!」 姫乃に付き添ってもらって(か弱い姫乃に肩を貸してもらってもかえって俺の負担が増えるだけだった)病院に行くと、医者から「湿布貼っとけば治るんじゃね」とだけ言われて帰ってきた。ヤブ医者の言うことは無視するとして、俺にできることは大人しく横になるくらいだった。無力なものである。これでは二次元の世界で学園バトルに巻き込まれたとしても、メインキャラ達と戦うどころかコマの隅っこで驚く群衆が関の山だ。 「気持ちは分かるけど、あんまり弧域くんを困らせちゃ駄目よ」 「すみません……」 残りの湿布を片付けてくれる姫乃が話しかける先、エルは机の下でしょぼーんと影を落としていた。さっきまでのはしゃぎ様からここまで落ち込まれると、なんだか俺がエルを苛めているみたいで申し訳なく思えてくる。俺も姫乃も怒っているわけじゃないけど、エルは浮かれていた分だけ過剰に落ち込んでしまったのだ。 椅子の足に寄りかかったニーキはアルトレーネ再販なんて関係無く、いつもどおりエルに呆れている。 「君は悪くない、と言うわけではないがそろそろ出てきたらどうだ。せっかくのアルトレーネ型再販なのだから今は喜んでおくべきだぞ」 「そう、ですけど……でも……」 「面倒な性格だな君は。少しは至極単純な君のマスターを見習うといい」 「ヒトが動けないことをいいのにコノヤロウ。じゃあ俺が今、何考えてるか当ててみろよ」 「フン、造作もな………………っ!? な、なにを考えているんだ君は! そんな破廉恥な格好でヒメに看護させる気か!」 「弧域くん!? 私になにさせる気よ!?」 「いやあ、その、ナースキャップの着用だけは認めてもいいかなと」 「意味がわからない!」 エルの深い深い溜め息が机の下から漏れた。 本当にアルトレーネ再販が嬉しかったんだろうな。再販プロジェクトではアルトアイネスのみ条件を達成してアルトレーネは見送られたけど、今回の再販はそれだけディオーネに要望があった、つまりそれだけアルトレーネが望まれたってことだし、絶対に不人気なんかじゃない。 その嬉しさを、何らかの形で表したかったんだろう。 かつて自分達が不人気ではないと、声高に叫んだように。 「ごめんなエル、今日は神姫センターに行ってバトルしたかったんだよな」 「…………」 「俺だって記念にバトルして、エルが強い神姫相手に勝って、二人で再販と勝利の喜びを味わいたかったぜ。俺はビールとか大っ嫌いだけどさ、今日だけは電気ブラン以外の酒もがぶ飲みできそうだ」 「……マスターを動けなくしちゃったのは私です。全部、私のせいなんです……」 はあ……と再び大きく重い溜め息。 ちょっと腰を打ったくらいで動けなくなったのは情けないけど、俺だっていつまでもエルの溜め息を聞いてやれるほど心が広いわけじゃない。 「勘違いしてないかエル。バトルは神姫センターでしなきゃいけないって決まりはないんだぜ」 「でも、このあたりでバトルできる一番近い場所が電車で二駅のあの神姫センターです。それ以前にマスターは起き上がることだって……」 「そういうことじゃなくてだな。神姫の強度は並じゃないからな、案外どんな場所でも戦えたりするぞ。たぶん」 ニーキだけは俺の言いたいことを早いうちに理解して、やれやれと首を振った。なんだかんだ言われるだろうけど、バトルには付き合ってくれるだろう。ニーキはこれでかなり付き合いのいい奴なのだ。 「どんなステージでも戦いますけど、その筐体が無いと――――あ、もしかして」 「そう、そのもしかしてだ。ニーキも付き合ってくれるよな」 「君や姫乃に怪我をさせてしまう可能性がある。物が壊れたらどうする。片付けは誰がやる。近所に知られて騒ぎになったらどうする」 「全部そうならないよう頑張ってくれ。エルとニーキならできるだろ?」 「はいっ!」 「はあ……」 「どういうこと? 弧域くんはこの部屋どころかベッドからも出られない、のに?」 やはりというか、わざとそうしたというか、姫乃だけが一人置いてけぼりになっていた。姫乃は漫画で非常に重宝されるタイプだな。意味不明な能力や黒幕の正体を解説するキッカケになってくれてすごく助かる。 でも今回はそんなに難しいことじゃないしニーキの台詞もあって分かりやすいと思うんだけどな、と自分の彼女の鈍さが心配になってきた。 とはいえ姫乃に解説をしてやるのは隣に立つ俺の役目だ。大した能力もないくせに異能バトルに巻き込まれるよりは、そのバトルを遠くから眺めて解説役に徹するほうがいいだろうし。 「ベッドから出られないのなら、寝転がったまま見える場所で二人にバトルしてもらえばいい。今回のバトルステージは “この部屋” だ」 「 !? 」 目をまん丸にして姫乃はいっそわざとらしいくらい驚いてくれた。 うむ、今日も俺の彼女はかわいい。 一旦姫乃の部屋に戻ったニーキが装備してきた武装は、というか武装と呼んでいいのか、真っ黒の学ランを着ていた。クールなストラーフ型によく似合うと思う。 学ラン主人公が姫乃の最近のトレンドらしくここのところニーキはこの服ばかり着ている。でも俺の中にはさっきまで呼んでいた漫画の影響で 学ラン=気持ち悪い男 という図式が出来上がってしまっていた。というか、この賭けバトルもその男の台詞からの発想である。 いや、発想ではなく丸パクリだった。 ニーキが勝てば、俺は姫乃の言うことをなんでも1つだけ聞く。 エルが勝てば、姫乃は裸エプロン。 「おまかせ下さいマスター! 必ずやニーキ姉さんを打ち負かし、姫乃さんの恥じらう姿をご覧頂きましょう!」 「なんでそんなにヤル気なの!? 目を覚ましてエル、弧域くんに変なことに利用されてるのよ!」 「変なことだろうと変態的なことだろうと私はマスターのために戦うだけです」 「キメ顔で言わないでよ全然かっこよくないからね!? ニーキも何か言ってよ!」 「心配するなヒメ。私が負けると思うのか」 「そ、それは……でも……」 「万が一私が負けても、ヒメが多少恥ずかしい思いをするだけだ」 「こんなの絶対おかしいよ!」 一人異を唱える姫乃をまた置いてけぼりにして、エルとニーキは机の上で対峙する。 エルの装備はいつも通り、鉛色のロングコートに、両脚には無骨な白い強化パーツ。両手に持つ二振りの大剣をゆったりと構えている。 対するニーキは何も持たず、構えを取るわけでもなく、半身になって立っているだけだ。小道具はすべて学ランの下に隠している。 バトルを繰り返すことでエルが【スピード】に特化していったように、ニーキは【不可解さ】に特化していった。俺がエルと出会って最初に挑んだバトルでニーキが見せた『認識できない移動』は一度はエルが破ったものの、ニーキはそこからさらに発展させて今やレーダーにすら映らなくなり、そんな贅沢品を持たないエルが頼る直感さえも狂わせてしまう。 どういう仕組かをニーキは教えてくれず、その能力は謎に包まれたままだ。かっこよくて羨ましい。健全な大多数の男子が憧れるように、俺もそういう素敵な能力を持ってみたい。学園異能バトルの当事者になってみたい。 「余計なことを考えるのは後にしてくれ。弧域、バトルの合図を」 特段構えているわけではなくても(そしてこんな不真面目なバトルであっても)ニーキの張り詰めた糸のような緊張は感じられる。ニーキだけでなくエルもそうだ。大剣を握る手に必要以上に力が入っている。立ち回りにミスを許されない二人の戦法上、必然的にこの二人のバトル開始前は息苦しいものになってしまう。 「どういうこと?」 ナイス聞き役だ姫乃。 「神姫バトルって単純に火力や防御力が高ければいいってこともあるけどさ、基本的に立ち回りが重要になるんだよ。悪い例だけど、初心者狩りばっかりやってるシケた神姫のほとんどが飛行できるんだ。なんでかって、戦い慣れてない神姫が空を飛び回る奴に攻撃を当てられるわけがないし、ほぼ全方位から来る攻撃を避けられるわけがないだろ」 「うーん」 「極論、相手の攻撃が当たらず自分の攻撃だけが当たる位置に立ってさえいれば負けようがないよな。実際は相手も動くからそんなことは不可能だろうけど、お互いが動く中でベストポジションを見極めてそこに立たなきゃいけない。そこを見極め損ねた瞬間、相手が有利な位置に来て攻撃されるからな」 「うむむむむん」 「そしてエルとニーキは種類こそ違っても移動に重点を置いていて、それをミスした時にカバーできるだけの火力も防御力も無いだろ。だからミスできない。相手のミスを見逃せない。そんなわけで緊張しちゃうってわけだ」 「……えっと、つまり失敗しちゃいけない、ってこと?」 今のは話が長くなってしまった俺が悪いんだろうか。それとも理解してくれなさすぎる姫乃が悪いんだろうか。 「その『つまり』にどれだけの理解が詰め込まれてるか知らないけど、まあ実際に見たほうが早いな。それじゃ待たせたなエル、ニーキ。いくぜ――」 静かに対峙する二人は気持ち腰を落とした。 二人の頭の中では俺と姫乃のいるベッド以外の場所を足場と捉えている。往慣れたこの場所でどんなバトルが見られるのか、楽しみにしているのは俺だけじゃない。 エルも、ニーキも、薄く笑みを浮かべていた。 「レディ、ゴー!」 同時、エルは机を叩く音を残して、ニーキは気配を残して、その場から消えた。 「こ、弧域くん、さっき見れば分かるって言ってたけど、これじゃ見れなひゃっ!?」 ベッドの隣のクローゼットに剣が叩きつけられる音に驚いた姫乃が頭を抱えた。 確かにニーキがいたその場所に剣を振ったエルは目の前でニーキが消えようと驚くこともなく、周囲に目もくれずクローゼットを駆け上がった。直後、“背後にいた”ニーキがエルを追うようにマシンピストルによるフルオートを放つ。しかし既に高く駆け上がっていたエルには当たらなかった。無闇にクローゼットを傷つけただけである。 「姫乃は主にニーキに目がいくだろ。でもニーキが動くと絶対に見失うから、むしろ相手の神姫を見たほうが分かりやすくなるぞ」 「エルも早すぎて全然分かんないんだけど」 「じゃあもうアレだ。二人とも瞬間移動してるって考えたらいいんじゃないか」 「ああ、なるほどね。そうしてみる」 自分の能力を理解してくれない姫乃がマスターだと、ニーキはさぞ戦い甲斐が無いことだろう。かといって俺もニーキの移動法の仕組みを知っているわけじゃないけど。 でも確かにエル対ニーキの初バトルの時よりも二人のバトルスピードは格段に上がっていて、もはや別世界と言っても過言ではない。エルは単純に速度が向上していて、ニーキは神出鬼没さが増している。それに加えてバトルの経験値も多く積んだ彼女達の戦闘はもはやケチのつけようもないものだった。 「そこですっ!」 何もない場所にエルが斬り込んだ――かに見えたがそこには確かにニーキがいて、咄嗟に突き出されたマシンピストルごと斬り払った。 「くっ!」 「ニーキ姉さんのパターンもちょっとずつ読めてきましたよ。次はこっちです!」 斬られた直後にニーキが姿を消しても慌てることなく、エルはさらに畳み掛けて右のほうに剣を振った。ニーキのトリッキーな動きに騙されそうになるが機動力はあくまで平凡だから、姿を消したとしてもそれほど遠くへ移動しているわけではない。だからパターンさえ読んでしまえばニーキ攻略は難しい話じゃないのだ。 ……一昔前のニーキ相手ならば、確かにそれは有効だった。 「えっ……!?」 エルの右に現れたニーキを、エルは確かに斬った。だがそのニーキはダメージを負うでもなく、剣をすり抜けてフッと消えてしまった。 「どうした、私の幻影でも見えたか」 こつん、とエルの後頭部に黒い棒が押し付けられた。 「次に会ったら言っておいてくれ。『囮役ご苦労』とな」 ニーキのハンドガンが火を噴くギリギリ前、エルは頭を体ごと投げ出すように倒して辛うじて射撃を躱した。 倒れかけたエルにニーキがハンドガンを向けるが、ニーキが引き金を引くより先にエルは剣を床に叩きつけてニーキから離れた。 「分身とか忍者ですかニーキ姉さんは! 実はストラーフ型じゃなくてフブキ型なんじゃないですか」 「正真正銘、私は悪魔型だ。それと気をつけるんだなエル。そっちは――」 エルが離脱した先は本棚だった。最上段一列には教科書やノートが並べているが、それ以外は漫画で埋まってしまっていて、入りきらなかった漫画を棚の前に山積みしている。さっきまで読んでいた漫画も山の一部になっている。 漫画の山の麓まで逃れたエルは、恐らく、ニーキが仕掛けたトラップのスイッチを起動したのだろう。 「――そっちは本が崩れて危ないぞ」 ドサドサと音を立てて本の雪崩がエルを飲み込んだ。 これこそがニーキが持つ【不可解さ】の真骨頂だ。 いくら科学が発達したからといって自分の分身を気軽に作り出せるなんて聞いたことがないし、ニーキは今まで一度も分身だか残像だかを作り出したことはなかった。ニーキは「必要だったから分身した」と言うだろう。 エルがニーキの射撃を回避し、逃げた先に丁度罠を仕掛けておくなんてことができるだろうか。ニーキは「エルが逃げた場所に罠があった、それだけだ」と言うだろう。 認識されない移動をベースに、ニーキは不可解なほど自分に都合の良い状況を作り出しては相手を追い詰めていく。 まるで持ち駒を無限に用意した将棋のように。 まるでクイーンのようにポーンを動かせるチェスのように。 「そう、ニーキの能力こそまさに……『デビルワールド!』」 「勝手にセンスの無い名前を付けるな」 冷静につっ込まれた。ニーキだって自分の技にアレな名前付けてるくせに。 「言っておくがな、私の技に名前を付けているのはヒメだぞ」 「ちょ、ちょっとニーキ! それは言わない約そ……ち、違うのよ弧域くん? ほら、あれよ、きっと聞き間違いよ」 「ふ~~ん」 「…………」 「『 血 風 懺 悔 』」 「イヤッ! 言わないで!」 「『 夢 想 指 揮 ・ 護 姫 』」 「やめて恥ずかしくて死ぬっ!」 「『 十 三 回 旋 黒 猫 輪 舞 曲 』」 「いっそ殺してええええええええっ!」 「恥ずかしがるような技名を私に使わせないでくれ……」 いや、俺もカッコイイ名前は悪くないと思う。学園異能バトルならばやっぱり、ちょっと小洒落た技を持っていて然るべきだろうし。そういう意味でニーキは見た目も能力も漫画の登場キャラとして相応しい(敵か味方かはともかく)。 でも忘れないでほしい。 そういう小難しい技を打ち破るのはいつだって単純な技だったりすることを。 例えば、そう。 本の雪崩が殺到する瞬間に離脱できるほどの超スピードの前では、小細工なんて全くの無意味だ。 「技の名前が気に入らないならさ、参考例を聞いて考え直してみろよ――エル、言ってやれ」 「『紅魔――』」 武装やトレーニングで強化するといったレベルを超えた能力を持つニーキだが、その代わり、というわけではないが、普通の神姫ならば誰もが持つ特性を持っていない。そしてそれが決定的な弱点になってしまっている。 「弱点? どういうこと?」 「聞き役ありがとう姫乃。でも今は勝負中だからな、簡潔に言うぜ」 本棚の頂上を蹴りニーキに向かって超スピードで突進する鉛色の弾丸。 呑気に俺や姫乃と会話していたニーキは慌てて姿を消すが、もう遅い。 「ニーキにはさ、第三の目になってくれるマスターがいないんだよ、姫乃」 「『 ス カ ー レ ッ ト デ ビ ル ! 』」 「あ、メルですか? お姉ちゃんで――――うんうん、ありがとうございますっ! ついに姉妹揃って再販ですね! ――発売日ですか? そこまで贅沢は言いません。発売はまだまだ先ですけど、今工場で眠っているアルトレーネ達が優しいオーナーに出会える日を楽しみにしています! ――――――第三次戦乙女戦争? えっ、それはどういう――――ふんふん――――な、なんですかそれ!? そんなの許せません! 今すぐオーメストラーダに電凸を――――もう解決? またコタマ姉さんですか。ん? マシロさん、ですか。聞いたことない名前ですね。――ああ、コタマ姉さんのお姉さんですか、それなら納得です。それよりメル、今マスターの部屋の流し台の前に姫乃さんが立ってるんですけどね、どんな格好してると思います? ――――いい勘してますね、そのまさかです! ――ナースキャップ? そういえばマスターもそんなことを言ってましたけど、どういうことですか?」 「ちょ、ちょっとエル!? なにしゃべってるのよ!」 身体を隠すように縮こまった姫乃が流しから戻ってきて、エルが話していた携帯電話を奪い取った。 腕二本だけでは隠そうにも限界があり、またエプロンが必要最低限の布面積のものしかなかったため、どうしても隠し切れない場所というのが出てくる。 それは例えば、肩紐からストンとほぼ垂直に落ちる布の隙間からだったり。 それは例えば、料理とは前を向いて行うものでありカバーする必要の無い背後だったり。 実に。 実に眼福である。 もう俺は死んでもいいんじゃなかろうか、とさっき口に出したところ「そうすべきだ。君はさっさと死ね」と割とキツい捨て台詞を残してニーキは姫乃の部屋に帰っていった。 さっきの負け方がよほど悔しかったらしい。 「メル? 今エルが言ったことは全部デタラメだからね――――嘘! 全然分かってないでしょ! お願いだから貞方くんには――――――怒るよ? ――――――うん、ホントにしゃべっちゃ駄目だからね。約束よ、いい? ――うん、ありがとう。それじゃあね、はーい」 半ば強引に通話を切ったらしい姫乃は携帯をエルに返して、俺に凝視されていることに気付いた。 「あ、あんまりジロジロ見ないでよ……」 「なに言ってんだ。ジロジロ見なきゃ裸エプロンの意味が無いだろ」 この男のロマンをまさか実現できる日が来ようとは、いや実は姫乃が正式に俺の彼女になってくれた時点で期待はしていたわけだけど、こうしてリアルで目の当たりにできたとなるとその感慨もひとしおだ。 王道の学園異能バトルもいいけど、やっぱりちょいエロを含んだラブコメも外せないな。ただし絶対領域が僅かに解放されてるから少年誌には載せられないけど。 くそっ、未だズキズキ痛む腰が恨めしい。立ち上がることができたらキャベツを刻む姫乃の背後にまわってエプロンの隙間に手を差し込めるってのに。 「あっち向いててよぉ。料理してると手が塞がっちゃうから隠せないじゃない」 「隠せないのなら隠さなければいいじゃない」 「そ、それじゃただの痴女じゃない! あくまで弧域くんにやらされてるんだからね! それに私の身体なんて見ても面白くない、でしょ?」 「全然そんなことないぜ。具体的に言おうか、上から順に鎖骨――」 「言わなくていいから! ……もう、分かったから、せめてそんなに目を大きくして見ないでよね」 そう言って前を隠したまま流し台までバックで移動して、しばらくそのまま俺と見つめ合い固まったままだったが、意を決したのかクルリと流し台のほうを向き、再び料理に取り掛かった。 美桃! 「はあ……なんだか私はお邪魔みたいですね」 姫乃に通話を切られたエルはやれやれ、と携帯を置いて玄関へ向かった。 エルのおかげで男のロマンを叶えることができたという男として最低の事実が、今更になって罪悪感として重くのしかかってきた。 「私も姫乃さんの部屋に行ってます。終わったら呼んでください」 料理中の姫乃の下を通り過ぎ 「こ、コラっ! 下から覗き込まないでっ!」 玄関を自力で開けて出ていってしまった。 俺の部屋で、姫乃とふたりっきりになった。 裸エプロンとふたりっきりになってしまった。 包丁がまな板を叩く音と電気コンロの上で水が沸騰する音だけが聞こえてくる。 「えーと……母さんや、今日の晩飯はなに?」 何となく気まずくなったこの雰囲気をごまかしたかったのだが、姫乃は返事をしてくれずに野菜を切る手を止めた。 玄関の外から隣室の扉が閉まる音が聞こえてきた。 「な、なあ母さんや。晩飯……」 包丁を置いてゆっくりとこちらを向いた姫乃は、口を開いた。手は身体を隠さずに。 「今更聞くのもなんだけど……晩ご飯、何がいい?」 「えっ? そ、そうだな。母さんの作るものなら何でもいいよ」 「コレが食べたい、とか言ってくれないと、献立を考えるのって結構大変なんだからね」 「ご、ごめん」 電気コンロを止めて、姫乃はベッドに歩み寄ってきた。僅かに上気した頬が艶かしい。 「じゃあ、3つの中から好きなのを選んでね。1番、肉じゃが。2番、オムレツ。3番――私」 「…………」 「にはは。せっかくだから言ってみたけど、本当の夫婦ってこんなこと、言うの、かな。ん~恥ずかし~!」 「――3番」 「ん?」 「3番でお願いします」 思わず敬語になってしまった。 ここで1番や2番を選ぶ男は漢じゃない! 「い、いやいや弧域くん、さっきのは」 「俺の食べたいものを言って欲しいんだろ。3番」 「そ、そうは言ったけど、でも今は料理中だし……」 「栄養はいつでも補給できるけど、今は姫乃分を摂取したい。だから3番――姫乃を食べたい」 「…………そんなに、食べ、たいの?」 俺が頷くと、姫乃はさらに顔を真っ赤にしてベッドに腰掛けた。 姫乃を真横から見る位置になって、エプロンの絶対領域が完全に解放された。 裸エプロンを最初に考えた紳士は間違い無く天災的な天才だ。見慣れたはずの薄い胸とエプロンに触れている先端に、俺はこれほどまでに目を奪われてしまっている。 「でも腰、痛くないの?」 「腰が使えないのなら使わなければいいじゃない」 「さっきからどうしてアントワネットなのよ」 ビバ☆ラブコメ! 今もし二次元の神様が現れて異能バトルができるだけの力を与えてくれると言ったならば、俺は迷わず 「そんなことはいいから朝の曲がり角で食パン咥えた可愛い転校生とぶつからせてくれ」 と頼むね。 いや、違うか。 俺はハーレムって柄じゃないし、姫乃一人とずっとイチャイチャしていればいいや。 少年誌のラブコメのような八方美人なんて良くないに決まってる。 攻略するのは、姫乃一人で十分だ。 祝 ☆ ア ル ト レ ー ネ 再 販 ! おめでとうございます! これで多くのレーネ難民が救われることでしょう! 躊躇うことなくポチりました! 既にエルが一体ウチにいますが、そんなことは瑣末なことです。 一体いるのなら、もう一体お迎えすればいいじゃない。 名前はもう『アマティ』で決定しています。 ああアマティよ、早くその可愛いお顔を見せておくれ。 武装をせずに何が武装神姫か、とは思うわけですが、バトルをするなら少しくらい超科学的な能力があってもいいんじゃないかと思う今日このごろです。 全身がゴムでできた神姫素体とか。 13kmまで伸ばせるビームサーベルとか。 美味しいヂェリーを飲む毎に強くなる神姫とか。 いっそ素体の中に九尾を封印しちゃったり。 もういっそすべてをなかったことにしてしまったり。 まあ、どんな能力も裸エプロンの前では霞んでしまいますが。 15cm程度の死闘トップへ
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人物 名前:高城・ミッシェル・千尋 13歳 性別:千尋 ニックネーム:総帥 一人称:私(わたし) 二人称:あなた、きみ 科学者レベル:マッドサイエンティスト 一応主役『高城・M・千尋』と略してよい ブカブカの白衣と大きなリボンが目印の、愛すべき総帥様 若年どころか幼年ながら数々の学問に精通し、博士号まで持っているという厨二病全開の設定があるちびっ子 性別の項目がおかしいのは、設定を考えているうちに作者がわからなくなってしまったせいである 「いっそ、性別不明で良いや」と考えてしまったが最後、後は読者の皆様の想像にお任せする 『ミッシェル・サイエンス』をたった一人で取り仕切る恐るべきお子様 神姫 名前:「本名は非公開だ」 戦車型ムルメルティア 階級:少佐 一人称:私(わたくし) 二人称:貴官(きかん)、貴様(きさま) 忠誠度:総帥の為なら死ねる 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の頼れる隊長、コードネーム『α(アルファ)』 帽子や眼帯など戦車型の基本装備を身に着けているが、衣服はオリジナルの軍服に身を包んでいる 千尋は特別なバトルのとき以外は指示を出さないので、実質彼女が全ての指揮系統を担っている 千尋に絶対の忠誠を誓っており、危害を加えるものは容赦なく(人間、神姫関係なく)KILLするつもりでいる 身内以外に対する言動は非常に高圧的。ただし敵対の可能性がゼロになれば(口調こそ厳しいが)面倒見が良い、頼れる指揮官 名前:「非公開だ…例外なく、な」 砲台型フォートブラッグ 階級:大尉 一人称:自分(じぶん) 二人称:君(きみ)、お前 面倒事請負率:かなり高め 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の寡黙な副長、コードネーム『β(ベータ)』 常にバイザーつきの砲撃用ヘルメットを目深に被り、表情がよく見えない 常に櫛や手鏡を持っているなど、実は一番女らしい性格だったりする 後輩への指導は主に彼女の仕事で、曹長と一等兵は彼女が指導した バトルは主にスナイパーキャノンによる精密狙撃とハウィッツァー(曲射榴弾砲)による広範囲爆撃を使い分ける 名前:「公表の予定は無いであります!」 火器型ゼルノグラード 階級:曹長 一人称:私(わたし) 二人称:あなた 語尾:~であります 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の少々ズボラな突撃兵、コードネーム『γ(ガンマ)』 これといった特徴が無い、作者泣かせの困ったちゃん 十分なキャラ立ちができてないせいで、影が薄くなりがち が、語尾のせいで突然会話に参加してもわかりやすい バトルスタイルは後ろは気にせず突撃あるのみというものだが、なぜか生還率は隊の中でトップ 軍人気質…とは程遠いお気楽能天気の寝ぼすけ神姫 名前:「非公開にしろと言われてます」 戦闘機型飛鳥 階級:一等兵 一人称:わたし 二人称:~さん 癖:トリップ、大きな独り言 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の想像力豊かな新兵、コードネーム『δ(デルタ)』 第一話、第二話と連続でメインを張っているが、主役ではない 外見的に特徴は無いのだが、トリップ癖とダダ漏れモノローグで起動から一週間という短い期間の内に強烈なキャラ立ちを果たした 初の空中戦力となるが、今のところバトル未参加なので実力は未知数 今後もエンジン全開で行ってもらいたい 名前:リュミエラ 兎型ヴァッフェバニー 階級:なし 一人称:あたし 二人称:~ちゃん、~くん ついやっちゃったこと:一等兵の拉致 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の狙撃、個人撃破担当、コードネーム『B(ビー)』 かわいいものが大好きで豪快なお姉さん 第二話での名前ばらしはわざとっぽい 好物は紅茶とお菓子 バトルは基本的に参加しないが、参加するときは本隊を陽動にして、孤立したものを狙撃するという非常に地味な戦闘スタイル もしくは、もっとも攻撃力の高い相手を誘き出す役目を担う かわいいものはどれだけ見てても飽きないようだ 名前:フェリシエナ イルカ型ヴァッフェドルフィン 階級:なし 一人称:私 二人称:個人名、知らない場合は呼ばない 悩み:豪快すぎる同僚 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の潜入工作、索敵担当、コードネーム『D(ディー)』 第二話でやたら喋っているが、本来は無口無表情 同僚のBによって本編中に本名が出てしまったために、キャラ紹介で非公開にできなかった 好みは和菓子に緑茶と、純和風 Bと同じく基本的にバトルは不参加だが、参加するときは潜入偵察と各種センサーによる索敵に徹する さらに必要があれば、拠点の破壊工作や罠の設置など、相手にとって地味な嫌がらせをする 自室の中と外で口数が極端に違う その他のキャラクター 砂木 丈助 34歳 性別:男 相棒:ルルコ(マオチャオ型) 一人称:俺 二人称:お前 相棒との関係:俺の嫁 『砂木探偵事務所』の所長、自称三十代半ばのナイスガイ 幅広いネットワークを駆使して『Forbidden Fruit』まで辿り着いたようだ 相棒のルルコに頭が上がらない ルルコ 猫型マオチャオ 相棒:ジョースケ 一人称:ルルコ 二人称:キミ 伏字:不使用 砂木の所持神姫…というより相棒、ファイル棚の奥も見逃さない 『Forbidden Fruit』の購入はこの娘の強い要望だったようだ 将来の夢は、冗談抜きで『お嫁さん』 企業紹介 ミッシェル・サイエンス 全十階建ての、中心街に立つには規模の小さいビル 千尋が経営している会社…会社と言っているが、働いている人間が一人しかいないため、実質自営業 どういうわけか国の営業許可が下りている 主な事業内容は、神姫のオリジナル武装開発と、神姫サイズの日用品や家電製品の製造販売 そのほかに、神姫用の特殊なボディも作っているが、こちらは発注を受けてから作り始めるオーダーメイド品。お値段も高額 さらに一般公開をしていない特殊なボディも作っているが、こちらは一体で豪邸が土地つきで買える値段になる 詳しい説明は下記を参照 秘密の地下室が存在しているらしい…… 製品紹介 素体 Michelle-001 unripe fruit (未熟な果物) ミッシェルの試作素体、専用コアパーツとのセットで提供 非常に軽く柔軟性に優れる反面、神姫素体としての基礎防御力がゼロに近いので、装甲を追加するなどの処置を取ってもバトルには不向き どうしてもバトルを行いたいのであればヴァーチャルによるものを推奨、なおかつ相当な熟練が必要(神姫、マスター共に) 非常に精密な技術で人間に『似せて』作ってあり、MMSの特徴である剥き出しの間接はなく、肌の質感はもちろん、神姫に必要の無いはずの生殖器まで精巧に作ってある パッと見ると1/10サイズの人間そのもの 食事が可能で、水分以外は体内で完全に分解できる 水分は発汗などで消費することができるが、貯蔵量を超えた場合は強制排出が必要 内臓器官や骨格は完全に再現できなかったため、『人造人間』とまではいかないが、「すでに神姫じゃない」と言っても反論の余地は無い さらに、思考も再現できなかったため、AIを純正のコアパーツからのトレースしている。 手持ちの神姫を当素体に移植することも可能 損傷、故障があっても神姫センター等での修復は不可能ですので、異常が発生した場合は当社まで連絡をしてください 武装は腕、足に換装が必要な装備と遠隔操作ユニット、大多数のリアユニットが装備できない 使用したいのであれば同社の本素体専用装備(別売り)を使用することになる 製作時にある程度ならば体系の変更が可能であり、注文の際にマスターの好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 制作期間は受注してから約二ヶ月かかる Michelle-002X forbidden fruit (禁断の果実) ミッシェルの特殊素体、専用コアパーツと衣服もセットで提供 Michelle-001の発展型であるが基本性能は同じである 最大の特徴は体のサイズが10倍だということであり、こちらは近付いても人間との区別がつかない 当然のことながら、神姫バトルに参加することはできない 見た目が人間そのものであっても、当然のことながら人間の医療機関で治療をすることができず、さらに神姫センター等で修理することもできない 異常のある場合は当社まで連絡をください こちらも製作時に体系の変更がある程度可能であり、注文の際に好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 製作期間は受注してから約四ヶ月かかる (※商品受け取りの際に質疑応答があることと、受け取り直後にデータチェックがあることを予めご了承ください) 神姫ヴァーチャルコミュニケーションシステム SVCS「にじり口の茶室」 人と神姫を同じスケールにして触れ合うシステム 専用ヘッドセットは全国の神姫ショップにて取り扱っている 神姫はクレイドルを介してシステムに接続、マスターは専用ヘッドセットを装着する事によってシステムに意識を転送する サイズは神姫側に合わせられるため、神姫とコミュニケーションをとる以外にも自身で武装の試用など、擬似的な神姫体験ができる ただし、かたや生身の人間、かたや武装を自在に操る武装神姫なので、パワーバランスは歴然としている システムに入る際は、自分の神姫との関係を一度見直してみる事 神姫との関係が悪いと、接続直後からボコボコにされることもあるかもしれない ……ちなみに、殴られるとちゃんと痛い 以下、話数が増え次第追加します 戻る
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「もうっ!いつまで隠れてんのよ!」 アタシの対戦相手のハウリン、たしか凛っていったっけ?正直、あのコには同情する。起動直後でバトル?ありえない。アタシなら絶対イヤ。 そもそもこのバトルの原因の、アイツが絡んでたあの娘。そりゃあ、原因はあっちかもしれないけど、よそ見して歩いてたアイツも悪いんだし。向こうも謝ってるんだからそれでいいのに、なんでまたこんな面倒な事にするのかしら? いっつもそうなのよ、アイツは!態度ばっかりでかくてイヤになっちゃう。 ……いや、悪いトコばっかりってワケでもないのよ?たまにだけど優しいコトもあるし……あ、今は関係ないわよね。 とにかく、そんなワケであのコには同情してるワケ。でも、それはそれ。バトルになった以上は恨みっこなしという事で、さっさと勝たせてもらうつもりだったんだけど。 初心者ってワリにはなかなかやるのよね、あのコ。攻撃はもらっちゃうし、さっきので決めるつもりだったのに逃げられちゃうし。 いい加減探すのにも飽きてきた時、ようやくあのコの姿を見つけた。 巨大な砲身、蓬莱を手に待ち構えていたみたい。まともに撃ったってどうせ当たらないのに、まだ懲りないみたいね。エネルギーを使いきっちゃうけど、次の一撃で、レインディアバスターで止めよ! 「蓬莱ッ!」 相手の砲撃。そんなの何度も当たるモンじゃない。軽く避けて終わり―― 「きゃっ!」 不意に背中に走る衝撃。たいしたことないけど何?撃たれた?今のは…… 「プチマスィーンズ……!やってくれるじゃない」 小型の半自動支援メカ、プチマスィーンズ。銃器を取り付けられた四機のビットが、いつの間にかアタシの周囲を取り囲んでいる。でもこんなの、モノの数じゃないわ!所詮はムダなあがき…… 「わっ!だからムダだって言ってんでしょ……わっ!きゃっ!」 あ~、うっとおしい!ムダだって言ってんのに、しつこく撃ち続けてくる。一発一発はたいしたコトないけど、耐久力に自信がないアタシとしてはこれ以上撃たれるのはかなりマズイ。 回避の為に一度大きく迂回。するとハウリンが背を向けてどこかへ走りだした。また逃げるつもり?冗談じゃないわ、これ以上の面倒はゴメンよ!早く帰って、今日買った服を着たいんだから! ビットの銃撃をくぐり抜けてハウリンを追い掛ける。どうせスピードなら、圧倒的にアタシのが上。逃げたってムダよ! 建物の隙間を縫って走るハウリンを追い掛け、ちょうど四方をビルに囲まれた空間に飛び込んだその時、アタシはハウリンの姿を見失ってしまった。そんなはずない、確かにこっちに逃げて来たし、すぐ近くにいるはずよ。一旦足を止めて周りを見渡す。と、辺りの柱に取り付けられた妙なモノに気が付いた。どこかで見覚えのあるその『何か』。そしてそれが『何か』を察知すると同時に、レインディアを急発進させる。直後に響く爆音と衝撃、ヤバい。 アタシは逃げ場を求めてレインディアを急加速させる。四方を囲まれてる以上、上に逃げるしかない。爆発に巻き込まれるのもマズイけど、このままじゃ生き埋めになっちゃう。 「くぅっ!」 急加速、急旋回、急上昇。さすがにキツイ。体の芯まで響く派手な爆音、もし気付くのが遅かったらと思うとゾっとする。 今のはヤバかった。取り付けられていた『何か』、蓬莱のマガジンだ。炸裂弾が満載のマガジンを爆弾の代わりにするなんて、こすっからい手使ってくれるわね。初心者でここまでやれたのはたいしたモノだけど、もう頭にきた。ここを脱出したら、すぐに終わりにしてあげる。 崩れていくビルの合間を抜け出ると、目の前には空が広がっていて。バーチャル空間ではあるけど、雲一つない青空が広がっていて。だけどその直後に、アタシの視界は塞がれた。雲一つない空に現れた影。 「はあああああああっ!!」 体に走る衝撃と、砕け散る機体。翼を失ったアタシは、真っ逆さまに落ちていくしかなかった。 目の前にあるのは、雲一つない空、そしてあのハウリン、凛だった。 「ふぅ、これで全部セットしました」 『よし。もう少し経ったら姿を見せるぞ』 「ほ、本当に誘いに乗ってくれますかね?罠だと気付かれたら、打つ手がありませんよ?」 隼人の言う通りの場所に蓬莱の残弾、即席の爆弾を仕掛け終えた私は、何度目かの同じ質問をしていました。だってなんというか、あまりにもこの作戦は…… 『単純でいいんだよ。あのツガル、あんまり気の長いヤツじゃないみたいだからな。あの性格じゃあ、もうこの戦いにも飽きてる頃だ。格下相手だし、多少無理をしてでも決着をつけにくるハズだよ』 「ハズ……?」 『はず』 隼人の作戦はこうです。まず、いくつかの建物に爆弾を仕掛けておく。そして相手の前に姿を見せ、指定の場所まで誘導。タイミングを見計らってそれを起爆。四方で同時に爆発が起これば、必然的に退路は上に限られる。それを私が迎撃。相手がどんなに素早くとも、どこに来るのかわかっていれば命中させられる、という事です。 しかし、この作戦は全て予測に基づいたものに過ぎません。全て仮定で語られている以上、決して成功率の高い作戦ではありません。ですが―― 『俺はお前を、俺の相棒を信じる。だからお前も、俺を信じろ。お前の相棒を。な?』 「隼人……はい、わかりました!」 私は信じました。隼人の作戦を、隼人の言葉を。だってそう、私達はパートナー、相棒なんですから。 そして彼女は、アルさんは見事にこちらの思惑に乗ってくれました。そうなればあとは私の役目。放ったのは『獣牙爆熱拳』。捉えたのは私の持つ、最強の必殺技。その一撃は彼女を機体もろともに打ち砕き、強烈に地表へと叩き付けました。 「がはっ……」 彼女の体は固いアスファルトに放射状の亀裂を刻み付けると、そのまま力を失い横たわりました。もとより機動性重視で、防御や耐久力は低いツガルタイプ。もう立ち上がることは出来ないようです。そして―― 『K.O!Winner,Howling,RIN!』 コンピュータが試合終了のコールを鳴らします。そしてそのコールは同時に、私達、私と隼人の初勝利を告げるものでもありました。 「勝っ……た?私が……?本当に……」 『ぃぃぃいよっしゃあああああああ!!勝ったーーーーーーー!!!』 聴覚センサーが割れる程の歓声をあげる隼人。びっくりしました。ただでさえ信じられないことで驚いているのに、お陰で喜ぶタイミングを失ってしまったじゃないですか。 「わ、わーい」 一応喜びを表現しようとしてみたのですが。なんかもうダメっぽいですね。 『なーんだよ凛!もっと全身で喜びを表現しろって!ほーら、バンザー……おふぁ!?』 「!?」 な、なんですか、今の奇声は? 『うるさい!騒ぎすぎ!凛ちゃんがびっくりしてるでしょー!?』 えーと、この声はたしか、舞、さん?こちらからでは姿が見えないので、あまり外で盛り上がってもらっても困るんですが。 『だからって殴るこたぁねーだろ!?』 『うるさい!うるさいからうるさいって言ったの!』 『なんだと!?お前のがよっぽどうるせぇよ!!』 ああ、なんだか子供みたいなケンカが始まってしまいました。こんな時私はどうしたらいいんでしょう。戦闘中は夢中だったので特に気にしませんでしたが、素の応対にはまだ戸惑いがあるんですから。 「あ、あの、お二人共とにかく落ち着いて……」 『うるさいって言った方がうるさいんだよ!』 『なによそれ!バカなんじゃないの!?』 『バカ!?バカって言ったか、このバカは!?』 『誰がバカよ!?』 ああ、ダメそうです。聞いてません。完全無視です。もう、泣いてもいいですか?私。 「……信じらんない」 喧騒の中、天を仰いでいた彼女が、アルさんが小さく呟きました。 「このアタシが……負けた?アンタみたいな初心者に?」 「……」 信じられない、のは私も同様です。勝利の実感等、未だに沸いて来ないのですから。 「おかしいでしょ?せいぜい笑えばいいわよ」 「いえ、そんな事ありません。私なんかが勝てたのは隼人の、マスターのお陰なんですから」 「あんたのマスター?ソイツだって初バトルだったんでしょ?それとも、それだけアタシが情けないって言いたいワケ?」 「違います!ただ私は……隼人を信じる事が出来たから。隼人が、信じてくれたから」 「……?」 私自身、事態を受け入れきることは出来ていません。ですが、私なりに精一杯、彼女に応えなければなりません。私とのバトルに、全力で挑んでくれた彼女に。 「隼人が言ってくれたんです。俺も信じる、だからお前も信じろって。私は、それに応えたかったんです」 「……ハッ、なによそれ?信じるだの信じろだの……マスターとの信頼ってワケ?会ったばっかのマスターがそんなに好きなワケ?」 自然と顔が綻ぶのが自分でもわかりました。その質問だけは迷わずに、そして心から答える事が出来ます。 「はい!大好きですよ。だから私はがんばれたんです」 「……………よく恥ずかし気もなくそんなコト言えるわね。はぁ、なんかもう、どーでもいいわ」 あれ?もしかして呆れられてますか?彼女、アルさんは溜め息まじりに起き上がると、背中を向けたまま言葉を続けました。 「アンタ、バトルは続けるんでしょーね?」 「もちろんです!もっと強くなって、いろんな方と戦ってみたいんです!」 「……ふん、せいぜいがんばりなさいよ。…………また、ね」 それだけ言い残すと、彼女はさっさとフィールドから離脱してしまいました。『また』、一人の神姫として、そしていずれ戦う相手として、認めてもらえたという事でしょうか。 「はい。ありがとう、ございました!」 私は見えなくなった彼女の背中に一礼。心からの感謝を贈りました。 さて、神姫での決着は着いた。これで解決すべき問題は、あと一つ。 「おい、なんか言う事は?」 俺は半ば放心状態の残った『問題』に声を掛けた。このバトルに至ったそもそもの原因、彼にもそろそろご退場願おう。 「な、なんだよ!どうせこんなのマグレだ!」 「昔の人は言いました。『勝てば官軍』。さ~あ、なんか言うことは?」 「お……覚えてろよ!そのうち絶対リベンジしてやるからな!」 散々使い古された捨て台詞を残すと、騒ぎの元凶は慌てて走り去って行った。結局最後までオヤクソクを大事にするヤツだったな。名前すらわからないままだったのは気の毒だが。 「隼人。そ、その……ありが――」 「ったく、いつまでたっても手間がかかるヤツだな、お前は」 「な、なによ!人がせっかくお礼言ってんのに!」 わざわざ礼を言う必要なんてないのに、そんな改まった態度をとられると調子が狂ってしまう。だから俺はあくまでいつも通りに対応した。舞もいつも通りの憎まれ口を叩けるように。 「あの……」 「へーんだ、お前なんかに感謝されなくたっていいよー」 「なっ、調子にのるな!このバカ隼人!」 「んだと!?この泣き虫舞!」 「……あのー」 「誰が泣き虫よ!?私は泣いてなんかないわよ!」 「ウソつけ。さっきだってめそめそ泣いてたクセに」 「…………くすん」 「「あ」」 不意に聞こえた声に、俺達はようやく我に返る。はぐらかすだけのつもりが、つい白熱し過ぎてしまったようだ。舞と同時に視線を落とすと、そこにはいつの間にか凛が立ち尽くしていた。なかなか気付いてやらなかったせいか、凛は目尻に涙を溜めてすねているようだった。 「よ、よお、凛。お疲れ」 「えと、お、おかえり、凛ちゃん」 慌てて取り繕うが、どうしようもない程白々しい。凛はうるんだままの目で俺達を見上げると、哀しそうに抗議の声をあげる。 「二人とも、今私のこと忘れてませんでしたか?」 「「ま、まさか!」」 「…………ぐすっ」 「じょ、冗談だよ冗談!凛。よくやったな」 今にも泣き出しそうな凛。あやすようにその頭を指先で撫でてやると、恥ずかしいのか少し頬を赤らめながら目を細めた。 「ごめんね、私のせいで無茶させちゃって。ありがとう、凛ちゃん」 「いえ、そんなこ――」 「り、ん、ちゃーーーん!!」 「うわぁ!?」 舞の謝罪に応えようと口を開いた凛に、突然情熱的なタックルが浴びせられた。勢い余ってそのまま数回転した凛は、ようやく自分に抱きついたままの彼女に気が付く。 「あ、あなたは?」 「あたしヒカリ!舞の神姫だよ。それより凛ちゃん強いね!かっこよかったよー!」 「あ、ありがとうございます」 「ね、友達になろ!一緒に遊ぼーよ!あ!あたしともバトルしよ!」 凛のバトルを見て興奮しているのか、ヒカリは凛の肩を揺すりながら一方的に喋り続けている。勢いに呑まれた凛はしどろもどろに言葉を発しているが、完全にされるがままだった。 「こーら、ヒカリ。ちょっと落ち着きなさい」 「よかったな凛。早速友達出来て」 「はい!……あの、ヒカリ、さん?とりあえず離してくれませんか?」 「ヒカリさんじゃないの!ヒカリ!友達なんだからヒカリでいいのー!」 「だ、だからヒカリ!はーなーしーてー!」 すっかり気に入られたらしい。凛もまんざらでもないようで、これならお互いいい友達になれそうだ。二人を見つめていた舞も、俺の顔を覗きこむと嬉しそうに微笑んだ。 「よっぽど嬉しいのね。隼人が神姫買うって言ってから、ずーっと楽しみにしてたもん。近くに持ってる人もいなかったしね」 「ま、凛もなんだかんだで嬉しそうだし、よかったよかった」 「はーやーとー!助けてくださーい!」 「あはは、こんやはかえさないよー!」 やれやれ、なんだか賑やかになったものだ。こんな調子じゃあ、明日からも大変そうだ。 これからどんなオーナーと出会い、どんな神姫と戦うのか。きっと色んなヤツがいるのだろう。その全てが、俺は楽しみで仕方なかった。まだ目指す場所もわからないが、これから起こる全てを乗り越えて行こう。小さな相棒、武装神姫と。 「凛!これからよろしくな!」 「はい、隼人!こちらこそ!」 『武装神姫-PRINCESS BRAVE-』
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バトルも終わり、記四季は彩女と共に席を立った。 「しかしあの狙撃手、恐ろしいほどの腕前でしたね」 「だぁな。俺もまさか、動けなくなるほどに正確とは思ってなかった」 来たときと同じように、着物の肩に彩女を乗せその場を去ろうとする記四季。しかし記四季のその行動は、女の声で遮られた。 「・・・・おじいちゃん?」 記四季が振り返った先にいたのは、サラを肩に乗せた春奈だった。 「・・・おぉぅ。春奈じゃねぇか。元気してたか」 突然の孫娘の登場で、記四季はばつが悪そうに頭をかく。 無理も無い。武装神姫はかなり市民権を得、一般にも普及し始めてはいるがまだかなりコアな部類に入る趣味だ。彼の周りには女性ユーザーが多いが、やはり男性ユーザーの方が圧倒的に数は多い。 見つかった相手が孫娘、ましてや記四季は老人である。何だかいわれの無い誤解を受けそうな空気だ。 「・・・・あー・・・つまりだな・・・・こいつはよ・・・ほら、アレだ・・・」 ボケ予防に買ったとか嘘をつくか? だが本当は妻が死んだとき、春奈の姉の都が寂しかろうといきなり送りつけてきたと言うのも別にいいかもしれない。 ・・・いや、そもそも自分は何故こんなにも混乱しているのか? 別にやましい理由が無いならば、真実を話しても構わないのではないか? しかしそれを言うのは都に悪い気がするし、なにより自分のプライドがそれを許さない。 ・・・どうしたものか、と記四季の脳が全力で回転していると 「お初にお目にかかります。記四季の神姫をしております。彩女と申します。春奈お嬢様のお噂はかねがね」 空気読んでない犬が、深々と座礼をしやがったのだ。 ホワイトファング・ハウリングソウル 第三話 『爺の心労』 「・・・つまり彩女ちゃんは、お姉ちゃんからのプレゼントって訳なんだ」 「・・・・応」 彩女が春奈に挨拶した後、なし崩し的にティールームに連れ込まれ(彩女の発案)店内で一番奥の席に座り(記四季、最後の抵抗)麦茶を注文したところで記四季は春奈に彩女の事を話していた。 「となると・・・まさかビルを袈裟切りしたのは・・・」 「はい、私で御座います」 神姫は神姫で話が盛り上がっているようだ。ようなのだが人間側が全く盛り上がってない。 別に春奈は普通にしている・・・というか記四季が“自分が神姫を持っている”事を気にしすぎて、春奈はどうすればいいのか対応に困っている。 彼の考え方は妙に古いところがあり、恐らくは女子どもが持つべき人形を男の、しかも老人の自分が持っていることを孫娘に知られたのがショックなのだろう。 ボケ予防に神姫を買う老人もいることだし・・・別に気にすることは無いと思うのだが。 「・・・そ、そうだ。彩女ちゃんってハウリンタイプだよね。なのになんで髪が白いの? 耳も生えてるし」 「・・・・・・なんでも、都が知り合いのカスタムメイカーから貰ってきたらしい」 「ふ、普段から甲冑着てるの?」 「・・・・家に送られてきたときは十二単を着ていた」 「お、おじいちゃんは、最近どう? 私はテストで赤点ぎりぎりだったよ」 「・・・・昨日イノシシ鍋食べた。・・・・・解体に手間取ったよ」 「・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」 会話が続かない。 春奈は今、非常に困っていた。 その様子を少し楽しそうにテーブルから見ているサラは本物のサドだろう。八谷以外でこんなに困っている春奈を見るのは初めてだ。 彩女はというと暢気に茶をすすっている。あんな山奥で暮らしていると人付き合いが無いため、春奈には悪いがちょうどいい機会であると助け船を出さないつもりだ。 「・・・あ、あのさ・・・えぇと・・・そ、そういえばお姉ちゃんも神姫を持ってるんだよ。悪魔型と犬型の姉妹でね・・・」 「クロとハチ公か。知ってるよ」 「う、うん、それでこの間その二人がね・・・」 「・・・アヤメ、キシキはハルナが苦手なのですか?」 「違います。多分、お嬢様に私の存在がばれたのが問題なのでしょう。ほら、私達はマニアックな存在ではないですか。多分引かれるとでも思っているのでしょう」 「なるほど、まぁその心配は無用ですが。・・・しかし大した狼狽ぶりですね。ハルナもさることながら、キシキも無言で狼狽すると言う芸を披露するとは。いやはや七瀬一族、中々に奥が深い」 「・・・まぁ主も山に引き篭もってばかりではいけませんからね。たまにはこうして街に下りるようにしているのです」 「山に引き篭もる・・・随分アウトドアなヒッキーですね」 「事実その様なものです。あの竹が生い茂り、緑しかない景色の中では、あまり外にいると言う感覚がしません」 「ほほぅ、竹林ですか。少し見てみたいですね」 「それでしたら春奈お嬢様と是非お越しください。文字通り何も無い場所ですが、持てる限りの持て成しをさせて頂きますので」 「それはありがたい。ではそのうちにお邪魔させていただきます」 神姫は神姫で暢気なものである。 「それじゃ、またね。おじいちゃん」 「・・・・・・・・・・応。お前も元気してろな」 ティールームで一時間ほど話した後、春奈と別れ記四季は帰路についた。 行きは手に持っていた杖を、今は突いている。・・・背筋は真っ直ぐではあるが。 「今日はお疲れ様で御座いました」 「・・・全くだ」 彩女が微笑みながら言うと記四季は溜息をつきながら答える。 自分がいなければ主はここまで疲れなかっただろうと、彩女は思ったが気にしないことにした。 何分刺激の少ない山暮らしだ。たまにはこういうのも悪くは無いだろう。 「こんなことならムラサキんとこ行っとけばよかった・・・そうすりゃ心構えも出来たってのによ・・・」 「主、彼女は『アメティスタ』です。・・・確かに彼女の“能力”には目を見張るものがありますが。それにばかり頼っていてはいけませんぞ?」 記四季と彩女が暮らす山の入り口にある北白蛇神社。そこにいる『アメティスタ』は予言ができると言う。確かに彼女は他の神姫とは違い、どこか神秘的な美しさを備えていはいるが・・・彩女にとってはただの友人だ。 ちなみに、アメティスタが予言が出来ることは秘密にされている。彼女のマスターが騒ぎを嫌う性格だからだ。そのためアメティスタは自身の姿を見せないように、パソコンで予言したことを書いて印刷している。その精度はなかなかで好評なのだが、予言できる内容が日常に関すること(どこぞのスーパーがセールをするとか。明日は雨が降るとか)ばかりなので地域密着型の預言者とも言えるかもしれない。 「ならば明日こそはアメティスタに会いに行きましょう。ここ最近彼女と話していませんしね」 「・・・俺ぁむしろ神主の方に用事があるんだがな。まぁいいさ、明日行こう。今日はもう帰るぞ。このままじゃ帰る頃には真っ暗だ」 「御意。最近不逞の輩が増えたそうですし、騒動は避けたいですな」 「タバコ屋のタミさんとこだったか? この間空き巣が入ったのは」 「ですね。まぁいつも居眠りしていらしたようですし。空き巣も何も取らずに帰ったそうですが」 二人は話しながら、逢魔ヶ時の街を歩いていった。 ・・・・二人が家に着いたのは日が落ちてからの事である。 前・・・次
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彼女は強い。 それは承知していたはずだった。 しかし、思わず愚痴が出る。 「なにも、こうも簡単に…、嫌な娘なンだからッ」 彼女は公式バトルの経験はほとんどない。 事実、バトル用の筐体に入った彼女のパラメーターは新参のそれだった。 LP lv.0 SP lv.0 攻撃 lv.1 命中 lv.1 回避 lv.1 防御 lv.0 総合lv.3 今しがた受けた忍者刀での攻撃も、ダメージは軽微。LPも合計200弱ほど持っていかれただけ。ただ、その攻撃の内容が問題だった。 まず、彼女の気配を察知することができなかった。そして攻撃。交錯する瞬間に放たれたその一振りは、確実に自分の左手首に当たっていた。これまでに受けた攻撃は合計三回。最初は足だった。右足、そして左足の順で攻撃を受けた。もちろん、神姫バトルでは攻撃が有効か否かだけで、攻撃部位によって、被ダメージが変わるということはない。どこで受けても一定の計算式に則った値が自分に与えられたLP値から引かれるだけだ。 しかし、その、相手の四肢から攻めて動きを止める、という明確な意志が籠った攻撃は、屈辱でもあったが同時に驚きでもあり喜びでもあった。今まで神姫バトルで部位を考えて攻撃するなどということは、自分が知るどの神姫もー、必然が無かったからではあるが、採ったことが無い行動だったからだ。攻撃を受けたことは屈辱だが、これまでにない新しい経験をできたことに喜びを感じていた。 「流石イリーガルの相手をしている、ってことよね」 しかし、自分の攻撃も当たらない。本来なら、パラメーター上では決してはずすことのない回避レベルである。それでも彼女は遮蔽物を巧みに使い、パラメーターの低さを補っている。補う? 訂正。恐らく彼女は己の回避レベルを意識していない。 本当に戦っているなら、もう勝敗はついている。 しかし、これは公式ルールに則った神姫バトルだ。改めて、自分のステータスを確認する。次の接敵でスキルを発動させられる。 ひょい、と目の前に彼女が現れた。忍者刀の間合いにはまだ少し遠い。 「これで終わりにするよッ!」 クライモアを振り上げた。 春。東京、某大学。サークル棟。「神姫同好会」サークル室。 その少女、山崎恵子は目の前で繰り広げられたバトルに思わず声をあげた。 新入生の勧誘を兼ねて行われたエキシビジョンマッチである。 「すごいよ、巴」 テーブルで一緒に観戦していた自分の神姫に声を掛ける。 「はい、マスター。勝者の方も凄いですが、Cランクであそこまで戦ったあの忍者型は本当に凄いと思い………ます」 巴と呼ばれたその種型の神姫は己の主人の声に応える。 周囲では、山崎と同様に勧誘を受けた新入生たちが、ある者は興奮しながら、またある者はささやくように己の神姫と今のバトルについて意見を交わしていた。その内容は山崎恵子たち同様、短時間でspを溜め込みドラゴンクラッシャーを放った、勝者の花形神姫に対するものだった。 勝者の花型、名をゲンドゥルという、がマスターである間中優の手のひらの上で観客の新入生らに手を振って呼びかけをした。アーマー類は花型の標準武装のそれである。ボディ・アーマー部には青のグラデーションで、音楽のフォルテを模したと思われる記号が配されていた。 ゲンドゥルは打ち合わせていた通りに勧誘の台詞を話し始めた。 「皆さん、見てお解りいただけたように、この同好会は上位ランカーでなければ入れない、というわけではありません。いろんな方々に入って頂きたいんです。今でこそ神姫バトルがメインになっていますが、武装神姫である必要はありません! 互換があるMMS素体のマスターであればオッケー。神姫の服飾デザインに興味のある方や小物作りが好きな方なんかも大歓迎! あたし自身もバトル以外でも素敵な衣装が欲しいしね。気づいていると思うけど、室内の棚に飾っているのは同好会のメンバーが作った………」 「あ、すいません。じゃぁ、ウチの子なんかもいいんですか」 質問を投げかけた新入生の肩には、ホットパンツにビキニを纏ったMMSがちょこんと腰をかけていた。 「もちろん! 最近発表されたSOLの皆さんもオッケー。ローカルルールを作って異種バトルなんかも考えてます」 ゲンドゥルの声に新入生たちからどよめきが上がった。 山崎恵子は、ふと、自分の神姫があらぬ方向を見て動きを止めていることに気づいた。 「巴?」 一拍の間を置いて、神姫が彼女に応えた。 「マスター、わたし、あの人たちに会ったことがあるような気がします」 と、先ほどまでゲンドゥルと対戦していた忍者型とそのマスターを指した。 マスターの男性は、標準体型で身長は170センチを越えるくらい。髪を短く切りそろえ茶色いコーデュロイのジャケットを羽織っていた。山崎はその姿を見た瞬間、自分と同じものを感じ取った。理由はさほどない。ただ、自分と一緒だ、と感じただけだ。 「シラヌイ」 彼は自分の神姫をそう呼んでいた。 フィンランド、ヘルシンキ空港。出発ロビー。 若い女性の声。日本語。 「そういえば、シラヌイさんたち、今頃同好会の新入生の勧誘をしてるはずですね」 その声に、ベンチに座った男が応える。名を相原竜之介、という。 「おや、椿もそういうことをしてみたいのかい」 隣の席に置かれた鞄の上に立つ侍型の神姫に向かって声を掛けた。サンダル履きに作務衣の上下を着た相原の姿とは対照的に、その椿と呼ばれた神姫はフォーマルな桜色のスーツを身に纏っていた。 「いえ、彼も当初と比較して、人付き合いが上手くなったと思います。これもマスターの働きかけあってのことです。以前なら、そのようなことに参加するなんて思えませんでしたが」 「買いかぶり過ぎ…、だよっと」 相原は手にしたPDAをタップしてメーラーをチェックする。 「何か新しい情報がありましたか、マスター」 相原は奇妙な笑いを浮かべた。困ったような、嬉しそうな、人を小馬鹿にしたような表情にも見える。それは、この男が時折見せる特有の表情である。 「どうやら、ね。例のノード群の情報の流れを掴むことができたようだよ」 東京、西東京市。とあるアパート。 「うーん、何か調子ヘンなのよ、最近」 作業デスクの上から、悪魔型神姫がマスターの男性、天野敬三に訴えている。 「ユリ、君はどうだい」 天野は悪魔型の傍らに立つ天使型に尋ねた。 「ケイと一緒よ」 「って、何がヘンなんだ。もうちょっと具体的に」 そう言うと、二体の神姫は互いに顔を見合わせた。どこまで言っていいのかな、とでも言う風に。 「ネット上にアタシたち神姫が情報交換する掲示板があることは知ってるわよね」 悪魔型ー、ケイが切り出した。 「ああ、うわさは聞いたことがある。でも誰も見つけられないでいる。それがどうしたんだ」 「どこかのサーバーにあるわけじゃないからなの」 天使型の、ユリが続ける。 「私たち神姫同士がピアとして、直接データをやり取りしてるの」 天野は一瞬ポカンとして、次にパンと手を打った。 「思い出したぞ。大学の情報処理の講義で出てきた。確か今世紀初頭のP2Pソフトのwinny2で実装されていた掲示板機能だな。………そうか、それなら確かにネット上でその存在を探知することはほとんど困難になるはずだ! いや、上手い手を考えたなぁ」 興奮してひとりで話し始めた。 「おーい、馬鹿オーナーっ」 ケイが、デスクの上で跳ねる。悪魔型特有の長いツインテールがぴょこぴょこと揺れる。 「あ、いや。済まん。ーで?」 「えーっと、ですねぇ。わたしたちたが『おかしい』と言っているのは、本来、クレイドルでバックアップ、デフラグとアップデートをしているだけのスリープ状態のはずなのに、P2Pをしたときのような感じが残っているってことなんです」 話の腰を折られながらもとりあえず説明をするユリ。 一瞬、考えを巡らせた天野が口を開いた。 「むむむ………さて、それじゃー、とりあえず、次の休みにでも神姫センターにでも行ってみようか。ちょっと俺じゃ手に負えないしね。それまではスリープのときにはネットとの接続を切っておこう」
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ウサギのナミダ ACT 1-30 □ ティアと共に、歩き慣れたこの道を歩くのは、実は初めてだと気がついた。 はじめの時はティアの電源は切っていた。 その後の時には、ティアは一人アパートに残って自主練していた。 「まあ、それでお前が家出したのは、苦い思い出だが……」 「言わないでくださいっ」 ティアは俺の胸ポケットに顔を埋めて恐縮する。 俺は苦笑しながら、ゆっくりと歩いていく。 手には、いつものようにドーナッツの箱。 今日は海藤の家に向かっている。 ゲームセンターに出入りできなくなった俺は、いい機会だととらえることにして、お世話になったところに挨拶まわりに行くことにした。 海藤の家に来るのは、前回からそれほど経っていなかったが、随分前のような気がする。 その短い間に、あまりにも多くのことがあり過ぎたのだ。 だが、そのおかげで、こうしてティアと共に海藤を訪問できる。 嬉しいことだった。 「やあ、よく来たね。入って入って」 海藤はいつものように、俺たちを歓迎してくれた。 「いらっしゃいませ」 そう言うアクアの涼やかな声も変わらない。 俺が二人の様子に思わず笑みを浮かべると、二人とも満面の笑顔を返してくれた。 海藤はコーヒーを淹れながら、旬の話題を口にする。 「バトロンダイジェストは見たよ。随分白熱した戦いだったみたいじゃないか」 相変わらず、海藤はバトルロンドの情報収集に余念がない。 テーブルの上に、くだんの最新号が置いてある。 表紙を見るたび、面映ゆい気持ちになる。 「その表紙は勘弁してほしかったんだがな……」 「いいじゃないか。その表紙、結構インパクトあったみたいだよ。 ネットでも評判を調べたけど、かなりの反響だ。 記事の内容については……特に神姫との絆についての言及は、おおむね好評みたいだね。 思うところがあるオーナーはたくさんいるみたいで、神姫との絆について、あっちこっちで議論になってる」 「へえ……」 それは知らなかった。 俺は意図的に、雪華とのバトルについての情報を集めるのを避けていたから。 神姫と人間との関係について、改めて考える契機になるならば、それはそれでいいと思う。 「それで、だ。海藤……」 「ん?」 ドーナッツを頬張る海藤に、今日の本題を切りだした。 ■ 「久しぶりですね、ティア」 「はい……アクアさん」 アクアさんとこうして話をするのは、実は初めてだということに、今気がついた。 でも、そんな感じが全然しない。 それは、よくマスターからアクアさんのことを聞いているからだろうか。 それとも、アクアさんが醸し出す雰囲気から来るものなのか。 アクアさんはイーアネイラ・タイプの典型だった。 落ち着いた物腰、優しげな表情、大人びた美貌に、鈴の音のように美しい声。 でも、アクアさんはそれらがさらに洗練されているように思える。 「ずっと……アクアさんとお会いしたいと……お話したいと思っていました」 「あら、そうなのですか? どうして?」 「アクアさんが……マスターが初めて憧れた神姫だから……」 わたしは少しうつむいて、言った。 マスターは、海藤さんとアクアさんを見て、神姫マスターになりたいと思ったという。 海藤さんとの仲がいいだけではなく、アクアさん自身にも魅力があるということだと思う。 わたしは思っていた。 マスターの心を動かせるほどの、アクアさんの魅力ってなんだろう? 「わたしは……嫉妬しているのかも知れません。 こうしてマスターと心通わせることができても、どんな神姫になればいいのか、わからなくて。 アクアさんなら、マスターが憧れた神姫ですから、きっとそのままでもマスターは満足なのではないかと……」 アクアさんは、優しい微笑みを浮かべながら、わたしを見ている。 「そんなことはありませんよ」 「そう、でしょうか……」 「あなたがボディを変えられて目覚めたとき、わたしもそばにいました。覚えていますか?」 「は、はい……」 わたしは少し恥ずかしくなる。 あのときも、わたしは泣きじゃくって、アクアさんに優しくしてもらった。 わたしは優しくしてくれた人たちに、お礼を言うこともできずにいて、やっぱりダメな神姫だと思ってしまう。 「あのとき……遠野さんはとても嬉しそうでした。わたしが今まで見た遠野さんで一番」 「……」 「今日も、とても嬉しそうな顔をしています。 あんな表情をさせるのは、ティア、あなたです。 遠野さんが神姫マスターになるきっかけだったわたしではなく、あなたなんですよ」 アクアさんはにっこりと笑う。 アクアさんは優しい。 今日もわたしを優しく励ましてくれる。 不意に、アクアさんは目を閉じて、こう言った。 「わたしも、ティアがうらやましいです」 「え……?」 なぜ? 海藤さんと幸せに暮らしているアクアさんが……わたしのマスターがうらやむほどの神姫が、なぜわたしをうらやむというのだろう。 「あなたが武装神姫として戦い続けているから。 マスターが本当はバトルロンドを続けたいと思っているのを知りながら……わたしは何もできないでいます。 あなたは戦える。遠野さんが望むように。 それがうらやましいんです」 驚いた。 アクアさんみたいに優しい神姫が、戦うことを望んでいるなんて。 「でも、アクアさんの想いも、海藤さんの望みもかなうかも知れません」 「え?」 「わたしのマスターが、かなえてくれるかも」 少し驚いた顔のアクアさんに、わたしはそっと微笑んだ。 □ 「『アーンヴァル・クイーン』と戦ってみないか」 それが今日の俺の本題だった。 バトルロンドを捨てた海藤だが、バトルをしたくないわけではないはずだ。 それに、クイーンならば、どんな条件を海藤がつけても、バトルしてくれるだろう。 俺は海藤に、クイーンがなぜ俺たちを指名したのか、その理由を語った。 「クイーンは、特徴のある神姫と戦い、戦い方を吸収しようとしている。 だから、バトルの場所も設定も、こちらの要求が通るはずだ」 「……」 「バトルのことを公にすることには、彼らはこだわっていないみたいだし……条件付きで、クイーンとバトルしてみてはどうだ?」 俺は別に『アーンヴァル・クイーン』の肩を持っているわけではない。 海藤自身、彼らに思うところがあるようだったし、機会があれば協力してもいい、みたいなことを言っていた。 雪華のスタンスは、バトルを拒む海藤に、ぎりぎりの妥協点を見つけることができるかも知れない。 それに、海藤だって、バトルロンドに未練があるはずだ。 クイーンとバトルして、その思いが再燃すればいいと思う。 それでアクアの心配の種も、一つなくなるはずだ。 だから、思い切って切りだしてみたのだ。 海藤は、一つ溜息をついた。 「まあ、確かに、クイーンに協力したいとは言ったけどさ……」 俺は黙ってうなずいた。 「だけど、まともなバトルロンドじゃ勝負にならないだろうし……彼らが望んでいるのも、そこじゃないんだろうしね……」 「……海藤」 「なんだい?」 「そんなに、バトルロンドに戻るのが嫌か?」 「……僕は一度、裏切られたからね」 苦笑いする海藤。 だが俺は言葉を続けた。 「だけど、バトルロンドは素晴らしいと思ってるだろう?」 「……うん、そうだね」 「この間、お前の家に来たときに言われた言葉……今でも覚えてるよ。 『バトルだけが神姫の活躍の場じゃない』ってな。 その時は俺も、バトルロンドをあきらめようと思った。お前の言うことももっともだと思っていたさ。だけどな……」 海藤は不思議そうな顔をして、俺を見つめている。 俺は続ける。 「あるホビーショップで、武装神姫のバトルを観て……ああ、やっぱり、バトルロンドはいい、と思った。 自分の神姫とともにバトルする時間は、何物にも代え難いと思う。 俺はバトルを諦めたくなかった……だから、今こうして、ティアとバトルができる。 お前も……そろそろ諦めるのをやめて、いいんじゃないのか」 沈黙が流れた。 長い間黙っていたような気がするが、大して時間は経っていないようにも思える。 やがて、海藤はまた溜息をつく。 「まいるよね……そんなに熱く語るのは、君のキャラじゃないんじゃないの?」 「……最近宗旨替えしたのさ」 「まあ……あのゲーセンじゃなければ……ギャラリーがいなければ、やってもいいのかな……」 「海藤……」 やった。 海藤がとうとうバトルに戻ってくる。 冷静を装いながらも、俺の心の中は沸き立っていた。 「それじゃあ、クイーンに伝えてよ。 バトルは受ける。そのかわり、これから僕が言う条件を飲んで欲しい。それでいいならバトルを受ける……あ、その条件でも、雪華が望むものは観られる、と伝えておいて」 「わかった」 そして、海藤から提示されたバトルの条件を聞くにつれ……その奇妙な内容に、俺の方が首を傾げた。 □ 「……それで、クイーンとアクアのバトルはどうなったの?」 隣を歩く久住さんは、興味津々といった様子だ。 ホビーショップ・エルゴに向かう途中の商店街を、俺たちは歩いている。 俺は少し渋い顔をしながら答えた。 「うーん……圧勝といえば圧勝だったんだけどさ……」 「へえ、さすがクイーン」 「いや、アクアが」 「え?」 久住さんは、目をぱちくりとさせて、驚いている。 それはそうだろうな。 俺は胸ポケットのティアに尋ねる。 「なあ、あの時のアクアと雪華の対戦、三二対○でアクアが取ったんだったか?」 「あ、最後の一本は相打ちだったので、三二対一でアクアさんです」 「……なにそれ?」 ミスティもきょとんとしている。 まあ、それもそうだろう。 普通のバトルロンドでなかったことは確かである。 どんな対戦だったのかというと、それはそれは地味な戦いで、雪華は手も足も出ずにあしらわれたということなのだ。 信じられないかもしれないが、本当なのだから仕方がない。 この戦いについては、いずれ語ることがあるかも知れない。 俺がエルゴに行くのは、店長に改めてお礼に行くのと、約束通り客として買い物に行くのが目的だった。 日暮店長は相変わらず熱い人で、俺が改めて礼を言うと、照れながらも喜んでくれた。 そして、先日の神姫風俗一斉取り締まりについて、少しだけ教えてくれた。 店長が、俺の渡した証拠を持って、警察にあたりをつけたとき、すでに警察内部でも、神姫虐待の疑いで神姫風俗を取り締まろうという動きがあった。 その発端となったのは、例のゴシップ誌に載ったティアの記事だったという。 あの記事は予想外の反響があったらしい。 そのため、警察も見過ごすことができなくなっていたのだ。 ただ、神姫風俗の取り締まりを、どの規模で行うかは決まっていなかった。 今回の一斉捜査にまで規模を広げるように尽力してくれたのは、かの地走刑事だったそうだ。 なるほど、警察の動きが妙に早かったのは、下地があったからなのか。 しかし、日暮店長が何をしてくれたのかは、何度訊いてもはぐらかされて、分からずじまいだった。 もう一つの用事である買い物は、もちろんティアのレッグパーツの改良用部品である。 エルゴには十分な部品が揃っているし、日暮店長も装備の改造や工作にやたら詳しい。 俺は自分で書いた図面を持ち込み、日暮店長と相談しながら部品を揃えていく。 在庫がないパーツは、カタログを見ながら店長のおすすめを聞き、それを注文した。 届いたときには、またエルゴに足を運ばなくてはならない。 時間もかかるし、電車賃もばかにならないが、店長へのせめてものお礼ではあるし、俺自身がこの店に来るのが楽しみで仕方がない。 久住さんも一緒に来てくれるのだから、そのぐらいの負担は大目に見ようという気になろうというものだ。 □ その久住さんには、彼女がホームグランドとしているゲームセンター『ポーラスター』に案内してもらった。 あの事件以来、俺とティアはバトルができる状況じゃなかった。 対戦のカンを取り戻すのと同時に、新しいレッグパーツ、新しい戦術も試さなくてはならない。 そのためには、日々の対戦環境がどうしても必要だった。 自宅でのシミュレーションでは、どうしても限界がある。 『ポーラスター』は、俺たちのいきつけのゲーセンよりも大きく、バトルロンドのコーナーも倍くらいの広さがあった。 それでもすべての対戦台が埋まっているほど盛り上がっているし、神姫プレイヤーも多い。 久住さんがバトロンのコーナーに入って軽く挨拶しただけで、歓声に迎えられた。 大人気だった。 あとでこの店の常連さんに聞けば、彼女はずっとこの店の常連だという。 『エトランゼ』として、他の店を飛び回っていることが多いので、この店に戻ってくると、常連プレイヤーたちの歓迎を受けるらしい。 久住さんの紹介で、俺はこの店でバトルする機会を得た。 ティアの新しいレッグパーツを試し、調整し、また戦う。 新しい技や戦術も実戦の中で試すことができた。 時にはミスティに協力してもらい、練習したりもした。 ありがたい。 おかげで、ティアは新しいレッグパーツをあっという間に使いこなせるようになり、新戦術を使いながら、バトルロンドを楽しむことができた。 『ポーラスター』は、客の雰囲気がいい店だった。 俺がティアのマスターだとばれたときには、ちょっとした騒ぎになったが、誰もが紳士的な態度でほっとした。 神姫マスター同士も和気藹々としていて、まずバトルを楽しもうという気持ちが感じられる。 初級者でも、上級者にバトルについていろいろ尋ねることをためらわないし、聞かれた方も丁寧に答えている。 このゲーセンの実力者は、久住さんを含めて五人いるそうだが、五人ともこのようなスタンスを貫いているという。 故に、中堅の神姫プレイヤーも初級者も、ついてくる。 そんな環境だと、上級者のレベルが頭打ちになりがちだが、エトランゼに影響されて、他のゲーセンに遠征する常連さんも多いという。 その結果、総じて対戦のレベルが高くなっている。 理想的な環境だと思う。 俺が通うゲーセンもこうだといいのだが。 □ そんな風に過ごして、一ヶ月が経った頃。 土曜日の夕方の『ポーラスター』。 久住さんと一緒にバトルロンドのギャラリーをしていた俺に、電話がかかってきた。 通話ボタンを押すと、 『わーーーーーっはっはっは!! みたか遠野、ざまあみろ!!』 大声の主は、大城だった。 隣の久住さんにも丸聞こえで、思わず吹き出している。 「……いったいなんなんだ、大城」 『ついにやったぞ! ランバトで、三強を倒して、ランキング一位だ!』 「おお……それはおめでとう」 そうか。 ついに大城と虎実は、あのゲーセンで一位になったのか。 それは、俺が待っていた連絡だった。 『どうだっ! 俺たちだってやればできるんだぜ、わっはっは!』 『つか、話が進まねぇだろ! かわれ、バカアニキ!!』 電話の向こうで、大城の神姫が叫んでいる。 しばらくして、虎実の静かな声が聞こえてきた。 『……トオノか?』 「そうだ」 『アタシ、ランバトでトップになった』 「聞いたよ」 『……約束、覚えてんだろーな』 「忘れるはずがない。俺たちをバトルロンドに引き留めてくれたのは、お前との約束だよ、虎実」 『ばっ……んなの、どーでもっ……そ、それよりも、ティアと! ティアと戦わせてくれるんだろ!?』 虎実の声がうわずっている。 照れているのが手に取るように分かる。 俺は思わず苦笑した。久住さんの肩で、ミスティが吹き出している。 「もちろん。お前がそう言ってくれるのを待っていた」 『なら……約束を守ってくれ』 「わかった」 明日、いつものゲーセンで。 ついにティアと虎実のバトルだ。 俺は携帯電話の通話を切ると、いつものように胸元にいるティアに声をかける。 「ティア……約束を果たそう」 「はい、マスター」 そう言うティアは嬉しそうに微笑んでいた。 次へ> トップページに戻る
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鋼の心 ~Eisen Herz~ 登場神姫の武装紹介 ~その他編~ 焔星(エンシー) 【壱式=炎(ホノオ)】 焔星の基本形態。 強力無比な【プロトン砲】を主兵装に、【レーザーブレード】や【シールドファング】、【オートガン】等で武装している。 基本的には回避主体の軽量級神姫だが、プロトン砲の火力は凄まじく攻撃力は極めて高い。 二機の【ぷちマスィーンズ】である【光阴(コウイン)】、【闇阳(アンヤン)】との連携を駆使する事で、ステータス以上の戦闘力をも発揮できる。 ただし、【光阴】、【闇阳】は、高い性能の代償として稼働時間が短い為、こまめな補給を行う必要があるが、その際の補給は、本体との接触により電力の譲渡と言う形で行われる。 その電力を生み出す為の大型ジェネレータをバックユニットに内蔵している上、プロトン砲とシールドの重みも加わり、機動性を維持する為に装甲の大部分をオミットする必要があった。 大型ジェネレータは、【ぷち】への補給以外にもプロトン砲のエネルギー源としても利用される。 【式神弐式=光阴(コウイン)】 浮遊移動を駆使する近接防御型の自律兵器。 上半身のみという特異な形態ながら、非常に高い装甲防御力と切断力の高い大鎌【デスサイズ】を有し、近接格闘戦で相手を追い詰める。 作中では使用していないが、飛び道具として双発式の【小型イオン砲】を装備している。 腕と頭部を本体内部に収納する事で球状の防御形態へ変形し、更に守備力を向上させることも可能。 高性能かつ多彩な装備を有するものの、そのエネルギー源は小型のバッテリー一つでまかなわれている為、こまめな補給が欠かせない。 【式神参式=闇阳(アンヤン)】 四足による安定性を活かした精密砲撃を駆使する砲撃支援型の自律兵器。 ある程度の連射力と威力を両立させた速射砲二門を主兵装とし、後方から焔星本体や【光阴(コウイン)】を援護する。 更に、変形する事で高速飛行も可能であり、砲撃の最適ポイントへと素早く移動することが可能。 また、飛行モード時に焔星本体を上に載せ、ボードアタックを敢行する事も出来、用途は多岐にわたる。 エネルギーの消耗が【光阴】ほど激しくないので頻度は多少落ちるものの、補給が必要なのはこちらも同じ。 【真鬼王=零】 焔星の高速戦闘形態。 従来型の【真鬼王】とは真逆に、速度と機動性を向上させる事を目的とした形態であり、焔星本体が、【光阴(コウイン)】、【闇阳(アンヤン)】と合体する事で形成される。 両ぷちとの合体により、それぞれのコンデンサを活用することが出来るようになるため、主兵装の【プロトン砲】もリロード時間が短縮され、発射間隔が短くなる。 また、【デスサイズ】、【レーザーブレード】、【オートガン】等も使用可能で、攻撃面に隙は無い。 巨大な割に装甲防御は然程高くも無いが、強化される機動性で攻撃を回避する事が出来る為、生存性は高い。 なお、【零】の高速戦闘能力は、機体に直結される二機の【ぷち】が焔星本体のAIとCSCを補助することで実現している。 【プロトン砲】 非常に高い威力を持つエネルギー砲。 榴弾砲と同様に、着弾地点で爆発を起こす性質があり、回避するのが困難な武器。 その威力、攻撃特性の代償として重量とリロード時間と言う枷を持つ。 【零】形態では【ぷち】用のバッテリーを流用する事で、リロード時間の大幅な向上を得ている。 【シールドファング】 【炎】形態時に盾となる部分を展開し、大顎として敵に食いつかせる武器。 奇襲性が高く、飛行タイプなどの脆弱な装甲ならば食い破る威力も持つが、重装甲タイプの神姫には歯が立たない。 本来は噛み付く事で動きを止め、【ぷち】でトドメを指す為の補助的な武器。 【デスサイズ】 単分子カッターを内蔵した長柄武器。 作中では使用していないが、大鎌、薙刀、長斧の三形態を使い分けられる。 切断力は凄まじいものの、少々重く扱いづらい面もある。 実は市販されている典雅の製品の一つ。 【レーザーブレード】 アーンヴァルのレーザーブレードを出力強化したもの。 威力はノーマルタイプに比べて向上しているが、稼働時間で劣り、充電に必要な時間も長い。 もちろん、威力が高いといってもカトレアはおろか、フランカーのものよりも出力は劣る。 ただし、通常の神姫相手に格闘武器として用いるならば、充分に強力な性能。 【オートガン】 【炎】、【零】、どちらでも使用できる小型火器。 通常のハンドガンとして手に持って使用する事も可能だが、脚部にマウントしたまま自動的に稼動し、発砲する事もできる。 威力は無改造のハンドガンと同じでしかないが、自衛火器としては有用であり、近接防御に一役買っている。 歌憐(カレン) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (karen001.jpg) 【重装潜水装備(メキアリル)】 目立たないものの、実はかなりの実力者である藤堂晴香の神姫。イーアネイラ型。 重装潜水装備となる【メキアリル】ではサポートマシンである【アイオール】をそのままバックユニットとして装備し、水中での機動力と攻撃力を強化している。 カレン最大の特徴は、主兵装である【オルフェウス】がギタータイプに改造されている事で、音響兵器としての性能向上に加え、そのまま近接武器としても使用可能。 特別に【エレメンタルソング】と銘を与えられているこの【オルフェウス】は、弦を爪弾く事でエッジ部分が共振を起こし、刺突のダメージを格段に向上させられる。 近接戦では、相手に突き刺したまま『演奏』する事で相手の内部(電子機器)に直接攻撃できる。 要するに轟鬼の『雷電激震』 背面ユニットで目立つ二器のサーペントは、【エレメンタルソング】に砲身を共振させる事でその効果を増幅するアンプの役目も持つ。 もちろん直接メーザー砲としても使用可能で、各種魚雷やニードルガンなどと合わせ、カレンの絶大な水中戦闘能力を支えている。 水中戦に限れば作中最強で、フブキにすら抗し得る神姫。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (karen002.jpg) 【軽装陸戦装備(メルリンク)】&【自立型随伴砲台(アイオール)】 9話で使用した軽装の陸戦装備。 本来肩装備のニードルガンを合体させ、ツインランサーにしているが武器はこれと【オルフェウス】だけ。 余談だが【エレメンタルソング】が開発されたのは大会直前なので、9話の時点では武器は普通の【オルフェウス】だった。 サポートメカである【アイオール】は、水中行動しか出来ないという制約はあるものの、水中戦では単独でも陸戦型の神姫を倒しうるほどに強力。 高い移動速度と圧倒的な火力を武器に、水中戦を制するだけでなく、VLS(垂直発射ミサイル)で陸上への支援攻撃も行える。 カレンの18番である【霧】も【アイオール】本体、及び発射されるミサイルから散布する。 天使型MMSブラック・アーンヴァル 試作開発段階のプロトタイプアーンヴァルをコピーした擬似神姫=マリオネット。 正確には神姫でもMMSでもないロボット。 旧海底資源掘削プラントで行われた戦闘(バトル)においてフブキ側の手勢として数千機が投入された。 CSCを搭載しておらず、本体内蔵のAIが司令塔からの大まかな指示で行動する方式。 もちろん性能は通常の神姫は及ばず、数で攻める物量戦でその真価を発揮する。 件の旧プラント攻防戦においては数種類のブラックタイプが確認されており、それぞれに用途が異なる。 神姫と違い柔軟な判断が出来ない為に最初から役割を分担していた物と推測されるが詳細は不明。 【TYPE/α】(写真上段) LC3レーザーキャノンで武装した空戦砲撃戦タイプ。 小回りは利かないものの、最大速度は最も早く装甲も(比較的)頑丈であった。 反応速度等に難のある擬似神姫だが、武装の威力は通常の神姫と変わらず、特にこの【TYPE/α】は突入側の最大の脅威となっていた。 頭髪はロングであり、レーザーの発熱を放出するヒートシンクの役割を果たしていた。 【TYPE/β】(写真中段) 空中格闘戦(ドッグファイト)に特化した戦闘タイプ。 上記の【TYPE/α】とは比較にならない旋回性能を持ち、射程こそ劣る物の時間当たりの総火力でも勝っていた。 手持ち武装のレールガンは後に市販される物とは違い、本体から電力を供給されている為、手首のジョイントに固定する必要があり運用には多少の難が見られる。 格闘専用のレーザーソードと防御用のシールドを一つづつ持った最もバランスの良いタイプでもある。 頭髪はポニーテールで、利便性と緊急時の放熱性能を秤に架けた結果だと思われるが、マリオネットにその様な判断が出来たのかは不明。 【TYPE/γ】(写真下段) 屋内白兵戦に対応した陸上歩兵タイプ。 装備は最も安価で、施設内に大量に配備されていた機種。 しかし、過半数を占めていた主力部隊は、たった一機の神姫に一瞬で撃破されており運用には問題点が残っていた物と推測される。 火器はアルヴォ系のSMGであり対神姫戦には十分な威力だが、特筆するべきような機構は見受けられない。 屋内での密集戦を想定してか頭髪は短く、過熱の多い武装の使用が出来なかった物と推測される。 尚、この戦いの後回収されたこれらのブラックタイプを参考にFrontLine社が開発した物が、トランシェタイプのアーンヴァルであるとも言われているが、同社から公式の発表は無い為に詳細は不明。 サソリ型MMSアルアクラン 神姫事業の先駆けであるグループK2が開発した試作神姫。 一体の神姫に極限の装甲と火力、それを支えるパワーを持たせたテストベッド機。 商品化する際の価格がストラーフやアーンヴァルに対し3倍ほどに上る為、試作段階で企画が終了している。 後にUnion Steel社が神姫事業に参戦する際、開発資料として譲渡されており同社のティグリース、ウィトゥルースの雛形ともなった。 主な武装は 【荷電粒子ビーム砲】×1 【2連装速射機関砲】×1 【電熱シザーアーム】×2 特筆するべき性能としては斥力場浮遊による滑走能力が上げられるが、これは単体では完成しておらず、バトルフィールドに予め電磁レールとして使用できる磁場発生装置が必要となる。 鋼の心本編の最終決戦場となる、旧資源掘削プラントには重要設備付近にある大部屋にこの電磁レールが予め敷設してあり、一体ずつのアルアクランが配備されている。 また、その電磁レールを利用し、主砲である【荷電粒子ビーム砲】を発射後に湾曲させる能力もあるが、滑走機能同様にレールの敷設された室内以外では使用できない。 余談だが、基本的に試作タイプの情報は他社に公開されない為、後にMagic Market社がサソリ型MMS(グラフィオス)を作成したのは単なる偶然である……。 清姫(キヨヒメ) 数多の重火器で武装し、強固な電磁装甲で身を守る巨大な神姫。 乱戦においては最強とも言われており、天海におけるランクは2。 火力の高さは言うまでも無いが、格闘能力、機動力も決して低くは無い。 非常に有名な神姫ではあるが、その実態は謎に包まれており、オーナーの正体すら定かでは無い。 一部では、イリーガルであるとも噂される。 幾度かバージョンアップを受けているが、現在(大会時)の搭載火器は以下の通り。 【3.5mm滑空砲】 主砲となる、インターメラル製の超大型滑空砲。 火力は凄まじく、直撃を受ければ如何なる神姫とてひとたまりも無いと言う、文字通りに必殺の火器。 重量がある為に取り回しが難しく、近距離では照準をつけるのは困難だが、破壊力はそれを補って尚余りある。 【1.2mm滑空砲】 副砲は【FB256 1.2mm滑空砲】と同様のもの。 腕部に内蔵されており、非常に広い射角と操作性を持つ。 威力では【3.5mm滑空砲】に劣るものの、近接戦でも使用可能である為に使用頻度は高い。 【1.0mm狙撃砲】 超長距離での主力となるロングバレルキャノン。 他の砲と同じく行進間射撃も可能だが、静止状態における精度が極めて高く、大口径の狙撃銃としても機能する。 ある程度の連射も可能で強力な弾幕を展開し、対空射撃を行う事も可能。 【0.8mm速射砲】 連射性に特化した小口径滑空砲。 清姫の弾幕の真髄とも言える火器であり、これと【ガトリングガン】の併用は極めて強力。 弾種は近接/時限信管の【榴弾】であり、対空高射砲としても機能する。 【ガトリングガン】 小口径の銃弾を極めて速い速度で連射する機関砲。 清姫の火器としては比較的小型だが、通常の神姫であれば主兵装であっても過剰とも言える程の火力である。 【6連短距離ミサイル】 左右連動で、合計6発の誘導ミサイルを発射するミサイルポッド。 短距離と銘打たれているが、通常の神姫の射程距離よりも遠くまで攻撃可能。 誘導性が極めて高く、飛行型、高機動型の神姫にとっては致命打となる。 【2連長距離ミサイル】 理論上フィールドの端から端まで届く長射程の巡航ミサイル。 威力は【3.5mm滑空砲】にも匹敵する程であり、極めて強力。 装弾数が少なめなのが弱点。 【レールガン】 電磁加速された小口径高速弾を発射する武器。 装甲貫通性が極めて高く、ジュビジーの【キュベレーアフェクション】ですら貫通する。 破壊力そのものは【榴弾】に比してやや劣る。 【スプレッドランチャー】 散弾のように拡散する【榴弾】を発射するランチャー。 比較的射程距離は短いものの、面制圧火器であり、広範囲を一瞬でなぎ払う。 更に連射も可能であり、主砲とは別の意味で凶悪な武装。 【小型機銃】 至近距離や小型目標への射撃に使用するバルカン砲。 補助的な兵装であり、威力も普通の神姫の副砲並で極立った特長は無い。 【Sマイン】 爆発し、周囲に散弾をばら撒く近距離用特殊兵装。 無差別攻撃であるため、清姫自身も攻撃を受けるが、散弾の威力は清姫の装甲で弾く事が可能である為、敵だけが被害を蒙る。 これを防ぐような重装甲の敵はそもそも至近距離まで近寄れない為、低い威力に問題は無い。 リーヴェレータ(リーヴェ) 飛行型かつ、重量級という極めて特異な神姫。 飛行速度は極めて遅く、他の飛行型はもちろん、平地であればトライクやティグリース、果てはハウリンにすら移動力で劣る事もある。 ただし、装甲はストラーフをも凌ぎ、攻撃力は極めて凶悪。 また、移動力の低さも地形の利用(悪路へ追い込む)や高度を下げながら飛行する事で加速を行い、補うことが可能。 空対空戦には向いていないが、バトルロイヤルの特性上飛行タイプは遭遇率が低く、リーヴェの装甲を貫けるだけの重火器を有さない事が殆どなので、結果として生存性は極めて高い。 主な兵装は機体下部の大型連装機銃と各種爆弾。 爆弾は【無誘導爆弾】【レーザー誘導爆弾】【燃料気化爆弾】【クラスター爆弾】【テルミットナパーム弾】等を多数有しており、彼女の真下は如何なる神姫もその生存を許されない地獄と化す。 実は重過ぎる重量をフロートで浮かして、ターボプロップで移動するという飛行船のような移動法である。 普段はお淑やかだが、バトル中は性格が豹変する。 それはもう、別人レベルで……。 何か溜まっているのかも知れない。 アーシュラ 【アトラクアナクア】 パワー最優先のチューンナップを施されたストラーフ。 天海市の神姫センターでも上位に位置する神姫の一人で、ランクは6。 最大の特徴は6本装備の【チーグル】であり、近接格闘で右に出る者はいない。 ただし、反応速度を向上させる為、思考能力を極限までカットしてしまう為、戦況判断が不得手。 過去に、「蜘蛛らしく糸を吐く能力」を付与された事があったが、自分で張った蜘蛛の巣を敵と認識し、即座に殴りかかった事がある程におバカ。 当然、正式採用は見送られた。 トリオ・ザ・サーべラス(Cerberus) 三機一組で活動するサーべラスの構成機体。基本的に三機とも装備は同一。 概要としては、ハウリンの標準装備をベースに、カスタムアップされた強化型ハウリン。 主兵装は【吠莱壱式】と【ヒートサーベル】(レーザーブレードではない)。 補助兵装として【拡散ビーム砲】(頭頂部の“耳”部分)を装備している。 ただし、【拡散ビーム砲】は出力不足で目くらまし程度の効果しかない。 機動面では、極小タイプのフローターユニットを内蔵しており、地面の上を滑走移動する事が可能で、通常のハウリンの比ではない高速移動を可能としている。 更に、装甲も充分に頑丈で、ハウリンタイプの特徴である頑強さと相まって高い耐久性を持つ。 しかし、これ程の高性能でありながら何故か戦果が振るわず、天海最弱の3機という不名誉な知名度を持ってしまっている。 三機の連携による、非常に強力な必殺技を持っているらしいが、未だ公開された事はない。 因みにオーナーは黒井三兄弟。 高校3年生の三つ子であるらしい。(黒い三年生!!) また、構成する三人のハウリンは戦闘中の呼称をα、β、γと言う記号で呼称するが、本名は別にあるとか。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る -